岡田将生、“クセ”のある役は「楽しい」 30代は新たな領域へ

映画
映画『聖地X』岡田将生インタビュー 20211028
岡田将生  クランクイン! 写真:松林満美

 映画『さんかく窓の外側は夜』では感情が欠落したダークな除霊師、『CUBE 一度入ったら、最後』ではキレると怖い無気力フリーター、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』では理屈をこね回すひねくれ者の弁護士…近年、チャレンジングな難役で新境地を開拓し続けている俳優の岡田将生。最新作『聖地X』では、女優の川口春奈演じる勝ち気な妹にかき回される“ポンコツ兄貴”をユーモラスに熱演し、またしても役幅を更新した。「気付いたら、クセの強い役ばかりやっていた」と笑顔を見せる岡田だが、その裏に秘めた思いとは?

 本作は、2016年の映画『太陽』に続き、入江悠監督が劇団イキウメの同名人気舞台を映画化した異色のホラームービー。夫婦生活に嫌気が差した要(川口)は、亡くなった両親の遺産を相続し、韓国の別荘で悠々自適に暮らす兄・輝夫(岡田)のところに転がり込む。要の悩みを聞いた輝夫は、彼女の傷が癒えるまで一緒に暮らすことにするが、そんな矢先、兄妹は、“聖地X”と呼ばれる奇妙な力が宿った土地にうっかり足を踏み入れてしまう。この場所に侵入した者は、「精神が蝕まれ、謎の死を遂げていく」と言われており、有能な祈禱(きとう)師も太刀打ちできない。果たして彼らは、死の呪縛から逃れることができるのか?

●韓国の撮影スタイルに感動「みんなで同じ時間に温かいご飯を食べる」

 入江監督を軸に、『犬鳴村』『樹海村』のプロデュースチーム、『22年目の告白‐私が殺人犯です‐』『見えない目撃者』などを手掛けたCGチーム・ロボット、さらには『犯罪都市』『悪人伝』など数々の韓国映画を手掛けたB.A.エンタテインメントが制作に参加し、約1ヵ月にわたりオール韓国ロケを実施した本作。主演を務めた岡田は、韓国サイドの素晴らしい撮影体制に「驚かされた」と当時を振り返る。

 「何よりも、スタッフ、キャストの体調面を大切にしていて、完全週休2日制で、1日の終わり時間も早い。しかも、毎食ケータリングが充実していて、みんなで同じ時間に温かいご飯を食べるスタイルには感動しました。結束力も生まれるし、オンオフの切り替えもしっかりとできる。その代わり、本番でのワンシーンに懸ける熱量と集中力はすさまじいものがありました。僕ら日本組の演技に対しても『1秒たりとも見逃さない』という気迫がみなぎり、映画制作に対する真剣さがヒシヒシと伝わってきましたね」。

●「間違いない」入江監督に抱いた絶対的信頼感

 初タッグを組んだ入江監督の印象については、「強い信頼関係を結ぶことができた」という岡田。「例えば、僕が演じた輝夫というキャラクター。脚本を読んで、ちょっと地味なしっかり者のお兄ちゃんをイメージしていたんですが、入江監督から、『その“真逆”を演じてほしい』と言われて。そこから2人で話し合いながら役をどんどん膨(ふく)らませ、最終的には、人と目を合わせることもできないダメなお兄ちゃん像を作り上げていったのですが、そういうやりとりをする中で自然と信頼関係が生まれていった感じですね」と述懐する。

 また、撮影は韓国・仁川郊外を中心に行われたが、岡田は当初から日本とは違う独特の空気感に居心地の悪さを感じていたという。「そこに入った瞬間、相性の悪さを感じる時ってあるじゃないですか。そういう感覚ですかね、ソワソワして、なんとなく落ち着かない。まさに『入ってはいけない土地』という感じがして、入江監督があえてこの場所を選んだ理由がよくわかりました」と納得の表情を浮かべる。「撮影に入る前から、『頭の中で映画が完成しているんじゃないか』と思うくらいすべてが明確なんですよね。だから、『入江監督についていけば、絶対に間違いない』という信頼感から、迷うことなく役に没頭することができました」。

●30代は“クセ”のある役で新たな領域へ

 それにしても近年、岡田は、“クセ”が強すぎるエキセントリックな役柄が実に多い。もともと2枚目、3枚目、善人、悪人、変わり者…どんな役でも器用にこなす実力派の俳優ではあったが、前述したように、その振り幅はさらに広がりを増した。内容もキャラクターもクセだらけの本作は、ここ最近の岡田を象徴する作品になっているが、これは意図したチャレンジなのだろうか。「いや、あえてクセのある役にチャレンジしようとか、そういう意図的なものは何もなかったです。逆に気づいてもいなかった」と苦笑いする。

 「コロナ禍の影響もあったのですが、ここ最近、映画に携わる機会があまりなかったので、『映画の現場に行きたい!』という気持ちがものすごく強くなってきて、オファーをいただいた役を一つ一つ丁寧に演じていたんですが、新作が公開されて、取材を受けるたびに、『あれ? 俺、また人を殺してる』とか、『女性を傷つけてる』とか、そこで改めて変わった役ばかりやっていたんだなと気づいたんです(笑)」。

 今年32歳になった岡田。「20代は好青年役であったり、受け手側の3枚目役など、割と等身大に近い役が多くて、『30代になったら、もう少し違うところに行きたいな』と思っていたのですが、たまたまそういうお話をいただくことが重なって、こういうカタチになっているのかなと。自分自身、クセのある役がすごく好きだし、入江さんの現場でダメなお兄ちゃん役を演じることがめちゃくちゃ楽しくて、『やっぱり映画っていいな』って、改めて実感しました」と笑顔で語った。

●自分が思い描いている方向とは違うイメージを持たれることも

 どんな役も臆することなくチャレンジしている岡田。ただ、リスキーな面もあると言う。「この仕事をしていると、役のイメージもあるし、パブリックイメージもあるので、自分が思い描いている方向とは全然違うところに向かっていることが多々あります。それが不甲斐なくて落ち込むこともありますが、いつか自分が目指している俳優像、あるいは人間像と、皆さんが抱く『岡田将生像』が重なる日が来るよう、努力していきたいですね」。

 チャレンジャーであることを貫き通していれば、それこそ、気がつかないうちに、不動の岡田将生像が出来上がっているのではないだろうか。ひるむことなく突き進んでほしい。(取材・文:坂田正樹 写真:松林満美)

 映画『聖地X』は、劇場・配信で同時公開中。

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