無意識に女性を追い詰める彼氏を演じた稲葉友、人間関係は「思いやり」が不可欠

映画
映画『ずっと独身でいるつもり?』稲葉友インタビュー 20211019
稲葉友  クランクイン! 写真:高野広美

 田中みな実演じる36歳の独身女性が自身の幸せを見つけていく姿を描く映画『ずっと独身でいるつもり?』。雨宮まみ原案によるおかざき真里の同名マンガを映画化した本作は、“幸せや結婚とは何なのか――”、女性たちのリアルな姿をコミカルにポップに毒々しく、そして優しい視点によって映し出す作品だ。そんな本作で、主人公・まみの年下彼氏・公平を演じる稲葉友にインタビュー。公平は趣味や友人も多く、ポジティブでエリートと、一見申し分ないイイ男だが、無意識に悪意もなく、まみが傷つく言葉を放ってくる。稲葉がそんな公平から見えた人間関係における気付きや、初共演した田中に感じた意外な一面を明かしてくれた。

●無意識にまみを追い詰める公平の役作り

――台本を読んだ時、率直にどんな感想を抱きましたか?

稲葉:普通に生活していたら、“傷つけてやる”と意図された言葉を投げかけられる機会は少ないと思います。けど、親しい人からもらう悪意のない言葉が、捉え方によって自分をどんどん圧迫することってありませんか? 言った方も言ったことを覚えてないようなささいなことだけど、言われた本人は真綿で首を絞められるような感覚になることがある。僕が演じる公平は無意識にまみを追い詰めていく言葉を吐くことが多かったので、そこを強く思いました。

――ささいな言葉が関係性にズレを起こしますよね。まみの立場から見ると、公平にネガティブな印象を抱えてしまいますが、稲葉さんはどう感じられていましたか?

稲葉:そう思ってもらえたのならよかったです(笑)。僕はこの作品の象徴的な役柄で、6人分くらいの男性のちょっと良くないところをギュッと集めた印象で。なので、その1つ1つの良くない部分を象徴的すぎないように、自然に演じることが大事だと感じました。

――なるほど。そんな公平をどのように作っていったのですか?

稲葉:まずは公平の良いところを見つけて、彼を愛せるようにしました。公平はポジティブだし、趣味も多いし、友達や仲間も多く、先輩からもかわいがられていて。側面的ですが、まみのためにスパイスカレーを作ったり、愛情を表現したりと、相手のためを思って行動できる人です。自分の機嫌をとることも上手で、人の楽しませ方も知っている。公平のように物事を捉えられたら生きるのが楽しくなるかもと感じて。僕はすごくイイ奴だなと思って演じていました。

――確かに。客観的に見ると、申し分のないすごくすてきな男性ですよね。

稲葉:そうなんです。だけど、本質的にちょっと至らない部分が多い人ではあると思っています。そこをどう表現するかと考えたら、無自覚で不意に出てしまう言葉に悪意が介在しない方がいいなと感じて。公平が意図してまみの傷つく言葉を言っていたら、まみと付き合っていることやまみがプロポーズを受けるという決断に説得力がでない。なので、そこは意識し、一本筋を通して取り組みました。

あとそれぞれが抱く社会的な常識も大きく、それは育った環境や身の周りの人で左右するとも思います。公平は結婚はするものであり、苗字も男性のものにするという考え。今は夫婦別姓という意見もありますが、そこに関して疑問を持ってない。けど、まみはそうじゃない。自分の常識が誰かにとって真綿で首を絞めるような常識の可能性であることは分かってないんですよね。

●大切なのは「思いやり」

――公平とまみにはそれぞれの考えがあり、どちらが悪い訳ではなく、その時それぞれのタイミングや状況で変わってくることもありますよね。

稲葉:そうですね。あと、公平においては認識の甘さかな。今はパートナーに対して考えないといけないことが増えているのかもしれないですけど、全部にちゃんと思いやりを持てていたら、まみも違った捉え方をしていたかもしれない。公平はそこが欠けていたのかなと思います。

――稲葉さん自身、女性とコミュニケーションをとる時に大事にしているのは思いやりでしょうか?

稲葉:それもありますね。あと僕は男三兄弟で、家族に女性は母親しかいなくて、基本的に女性が分からなくて。けど、父親が「俺はいいから母ちゃんに配慮しろ」という考えで、そこは徹底的に教えられてきたので、女性には喜んでもらえることを考えて行動することが多いです。

――すてきですね。人はそれぞれ違いますが、思いやりを持ってお互いが歩み寄ることができたら、穏やかな関係を築くことができそうです。

稲葉:そう思います。大体の問題はコミュニケーション不足が多いですよね。男女の関係でなくてもそれは大事だし、この作品ではそうした部分を感じられるかなと思います。

――田中さんはご一緒されてどんな印象を受けましたか? 意外な一面はありましたか?

稲葉:ご自身で設定されるハードルが高く、すごくかっこいい俳優さんだと思いました。僕はみな実さんと出会って、「かっこいい」という感想を抱くとは思ってなかったんです。だけど、心遣いがすごく、面倒見の良さや人情味がにじみ出ていて、すごく好きになりましたし、そういう“すてきさ”は意外でした。また、現場の雰囲気もすごくよくしてくださって。僕の方が経験した現場数が多かったりもするので、現場では「待ち時間は何してるの?」など、いろいろ聞いてくださることも多かったです。コミュニケーション能力がすごく高い方で、ご一緒している時間は面白かったし、楽しかったですね。

●視野を広げて、深息吸して生きていきたい

――本作では「結婚」が1つのキーワードですが、結婚に対してどういうイメージを持たれていますか?

稲葉:僕は兄2人をはじめ、いとこが自分の上だけで10人以上はいて。みんな早いタイミングで結婚したので小さい頃から結婚式に行くことが多く、結婚は早くするものと漠然と思っていました。ですが、兄2人が結婚して子どもが生まれて親が孫の顔を見られたことで、僕にかかる圧がなくなった気がして、今はゆるく捉えています。家族と仲良くできる人とご縁があったらうれしいですね。

――この作品で結婚観は変わりましたか?

稲葉:実は僕の中では変化はなく、漠然としています。僕が響いたのは結婚観よりも人生観。やっぱり信頼した人でも、なかなかうまくいかないこともあるんだなと。自分が疎ましく思う人、それこそ家族だったりもしますが、そういう存在が本当に大事だと感じました。自分の足で歩いて行かないといけないけど、寄りかかることは何も恥ずかしいことではなくて。もう少し視野を広げて、深息吸して生きていきたいです。

――見る人によって、いろんな考え方や見方ができそうな作品ですよね。
 
稲葉:そうですね。男としては、こういうことは言わないようにしようとか思うかも。試写会を観た男性の感想で「勉強になる」という言葉があったので、そういう気付きを与えられたのなら、公平を演じて良かったと思います。みんな不用意に人を傷つけてしまうことはある、ということを肝に銘じなければいけないですよね。息が詰まる時代ですが、観終わった時にはそれがちょっと抜けて、見る前よりも少し深く呼吸ができるような作品なので、ぜひご覧ください。(取材・文:高山美穂 写真:高野広美)

 映画『ずっと独身でいるつもり?』は公開中。

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