蒔田彩珠、女優は“天職”「どんなことにも代えられない楽しさがある」

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20211006蒔田彩珠インタビュー
蒔田彩珠  クランクイン! 写真:松林満美

 子役としてデビュー以来、是枝裕和や瀬々敬久、大森立嗣、河瀬直美ら錚々(そうそう)たる映画監督の作品に出演し、高い評価を受けている女優・蒔田彩珠。そんな彼女が劇場版アニメ『神在月のこども』では、主人公カンナの声を担当した。さらに現在放送中の連続テレビ小説『おかえりモネ』(NHK総合/毎週月〜土曜8時ほか)では主人公の妹・未知を好演するなど、作家性の強い作品からエンターテインメント作品まで幅広い活躍を見せている。蒔田はどんな思いで女優業に取り組んでいるのだろうか――胸の内に迫る。

■お芝居の現場では、あまり台本を読み込み過ぎないように

――長編アニメーションでの声優は初でしたが、主人公のカンナを演じてみてどんな感想を持ちましたか?

蒔田:自分が想像していたよりも何倍も大変で、1日で録る予定だったものが、4日くらい掛かってしまいました。小学生の女の子役だったので、声を含めてカンナを演じることに、すごく苦戦しました。

――じっくりと声のお芝居をしてみて気づきはありましたか?

蒔田:声の仕事では、自分にはできていないことが明確に分かるなど、技術的なことも大切になってくるなと感じました。今回のアニメの場合は、すでに相手の方の声が入っていたので、カンナの気持ちだけでしっかりと表現していかなければいけないところは難しさでもあり、新しい感覚でした。

――女優としても数多くの作品に出演していますが、声優として臨む上で、何かこれまでと違うプロセスはありましたか?

蒔田:お芝居のときは、あまり台本を読み込み過ぎないようにしているのですが、今回はしっかりと台本を読んで、事前に頂いた動画に合わせてセリフを発する練習をしました。

――普段の映画やドラマに出演する際、あまり台本を読み込まないというのは、どういった意図が?

蒔田:もともとの理由は、小さい頃からあまり本を読むのが得意ではなかったという個人的な理由ですね(笑)。でも実際、自分が演じる役が出ているシーン以外というのは、その役にとっては知らないわけで、あまり物語全体を把握していない方が、演じる上ではいいのかなと思うようになったんです。

■準備してきたものは、現場で一度すべて忘れる

――ほかに実写の作品に入るときに準備することは?

蒔田:撮影に入る前に、自分の部屋で本番と同じように感情をイメージして演じます。でもそこから、いったん自分で作ったものは、全部忘れてゼロにするんです。

――それはどうして?

蒔田:お芝居には相手がいるので、対峙(たいじ)する人の雰囲気とか空気感で大きく変わってくると思うんです。変な先入観があると良くないので、一度フラットな状態に戻すようにしています。

――現場ですべてゼロにするのに、家で感情をイメージするのは、体に覚えさせるみたいな感覚なのでしょうか?

蒔田:そういう感覚に近いと思います。一度そういうことをしていると、どこかで何かのきっかけで、イメージした感情がスッと出てくるかもしれませんしね。

――お話を聞いていると、準備はするものの、あまり役を作り込まずに、その場で出た感情を大切にするやり方なのかなと。

蒔田:それはあります。テストやリハーサルをやっても、やっぱり本番になるとガラリと変わってしまうこともあります。もちろん監督から「違う」と言われることもあります。そこは監督にすべてを委ねています。

――本番で感情が湧いてこなかったら…という恐怖はありませんか?

蒔田:あります。『ヨーイ、スタート』が掛かるまでは、イチかバチか「神様、お願いします」みたいなところはありますね(笑)。性格上、あまりハラハラドキドキするのは好きではないのですが、本番で100%役に入り込めたときは、本当に楽しいです。

――100%役に入り込めたという感覚は、どんな感じなのでしょうか?

蒔田:役と自分が重なって、泣きたくないのに泣けてきたり、カットが掛かっても涙が止まらなかったり…そういうときは「天職だな」って思います(笑)。

■「この仕事しかない」と思う瞬間が増えてきた

――河瀬直美監督の『朝が来る』(2020)では、長い時間を掛けて役と向き合う“役積み”を経験し、数々の映画賞を受賞しましたが、そのスピーチで女優業への熱い思いを語っていました。

蒔田:小さい頃は「お芝居が大好き」という感じではなかったのですが、作品を重ねるにつれて「この仕事しかない」と思う瞬間が増えてきました。特に河瀬組を経験して、その気持ちが強くなってきていると思います。

――女優業にまい進するという気持ちがブレることはないですか?

蒔田:ほかにやりたいことがあるわけではないので…。あとは「天職だな」と感じる瞬間は、どんなことにも代えられない楽しさがあるので、それを求めてずっと続けていきたいです。

――所属する事務所ユマニテには、実力派俳優がズラリといますが、交流はあるのですか?

蒔田:コロナ禍以前は、事務所の俳優さんの舞台を観に行くことも多く、お会いする機会もあったのですが、今はなかなかないですね。でも「ユマニテなんだよね。だったら大丈夫だね」みたいなプレッシャーを感じることがあるので(笑)、それに負けないぐらい頑張りたいです。

――共演して印象に残った先輩はいますか?

蒔田:ご一緒したシーンはなかったのですが、『万引き家族』(2018)で、最後に警察の事情聴取を受ける安藤サクラさんの演技に震えました。ものすごかったです。

――才能溢れる映画監督や共演者とご一緒する機会が多いですが、今後の目標は?

蒔田:演じることは、自分が好きで始めて、楽しいから続けていること。これからも大変なことはあると思いますが、仕事という意識ではなく、自分の好きなことをやっているという思いで、これからも向き合っていきたいです。(取材・文:磯部正和 写真:松林満美)

 映画『神在月のこども』は10月8日より全国公開。

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