元宝塚トップ娘役・真彩希帆、退団から半年 カルチャーショックの連続の中に充実感

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『ドン・ジュアン』真彩希帆インタビュー 20210916実施
真彩希帆  クランクイン! 写真:松林満美

 今年4月に宝塚歌劇団を退団した元雪組トップ娘役・真彩希帆。圧倒的な歌唱力と表現力に定評のある彼女の退団後初ミュージカルとなるのが、Kis‐My‐Ft2・藤ヶ谷太輔主演のミュージカル『ドン・ジュアン』だ。待望の退団後初ミュージカル作品に挑む今の気持ちや、卒業から半年近くが経過しての心境の変化など率直な思いを語ってくれた。

◆退団後初ミュージカルの出演オファーに「ものすごく悩んだ」

 モリエールの戯曲であり、モーツァルト作のオペラ『ドン・ジョヴァンニ』などでヨーロッパを中心に広く知られる「ドン・ジュアン伝説」を、フェリックス・グレイの作曲による情熱あふれる名曲でミュージカル化。2019年に藤ヶ谷主演で上演されたものの再演となる本作は、宝塚時代の相手役・望海風斗の主演で2016年に日本初演が行われたという、真彩にとっても縁のある作品だ。

――今回、退団後初のミュージカル出演に『ドン・ジュアン』をというオファーを聞かれた時のお気持ちを教えてください。

真彩:宝塚の初演も観劇して、エネルギッシュで魅力的で、とても興味深い面白い作品だと感じていました。ただ、正直、お受けしようかというのはものすごく悩みまして…。自分としては挑戦したいなと思う気持ちがありつつも、この作品は自分が思っている以上にさまざまな方から愛され、記憶されている。そして、藤ヶ谷さん主演での再演。だからこそ自分自身“やるぞ!”と強く決意をしなければ、とても失礼になるなと思い、お話をお受けすることは一歩勇気が必要でした。

――演じられるマリアという女性に対してはどのような印象ですか?

真彩:自分に近いところはあると思います。マリアは、自分が本当に心から求めているものとは何かをずっと探している女性。心の声に耳を傾けて生きているんですよね。そんな日々の中、ドン・ジュアンと出会うことでこの人とそれを見つけていきたいと感じる。彼女は彫刻に対して強い思いがあります。でも、ドン・ジュアンとあらがえないような、まるで呪いのような愛を知ってしまった時に、彫刻以上にのめり込んでしまう。マリアにとってそれは恐れも感じますが、味わったことのない喜びでもあり…。猪突猛進、子どものような素直な心、そして情熱的な女性だと感じました。今回初めて男性と共演するということで、より生身の女性として、ダイレクトな心の動きや自分の心をさらけだして演じたい!と思っています。

――ドン・ジュアンという男性についてはどう思われますか?

真彩:ドン・ジュアンってプレイボーイですし、私個人は全然魅力的に思わないんですよね。だって、いちずなほうがいいじゃないですか…! まぁ、それはさておき(笑)、ドン・ジュアンってマリアに対してはすごく優しいんですよね。愛を持って接してくれる。マリアにとって、ドン・ジュアンって守ってくれる男性であって、かわいい守りたくなるような男の子であって、一緒に変わりたいと願う男性でもある。周りの女性から見たドン・ジュアンの男性的な魅力とはちょっと違って、好きという気持ちより愛しいという気持ちのほうが強いんじゃないかなと思っています。

◆藤ヶ谷太輔の人柄が作り出す稽古場の雰囲気に感謝と刺激

――そんなドン・ジュアンを演じられる藤ヶ谷太輔さんですが、稽古場での印象はいかがでしょう。

真彩:たいちゃんはすごく気さくで優しい方です。キャストの皆さん明るくて楽しくていい方ばかりで、私にとって初めての外部の現場ですが、昔から友達だったんじゃないかっていうくらいリラックスできるのが本当にありがたいです。それは藤ヶ谷さんが、初演時にキャストのみなさんと信頼しあい、作り上げたものがあるからなのだろうなと思います。藤ヶ谷太輔さんの人柄やあり方、作品への真摯(しんし)な向かい方にみんながついていくぞ!と自然になってるなと感じますね。

普段は本当に楽しくていつも笑ってます。「ちょっとー!なっちゃん(真彩)舞台経験豊富なんだから任せたよ!!」と言ってこられたり(笑)。藤ヶ谷さんが先生方にいろいろ質問をぶつけて貪欲に芸事に向き合っていらっしゃるのを見て、私もエネルギッシュに、ダイナミックに存在したいと思っているので、負けないようにしなきゃと刺激を受けたりしています。お芝居もすごくナチュラルでそこにスッと柔らかく存在している姿がすてきだなと思います。

――演出の生田大和先生とは、トップお披露目の『ひかりふる路~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』、退団公演の『シルクロード~盗賊と宝石~』とご縁がありますね。

真彩:宝塚時代から体調を崩したり悩んでいる時に親身に話を聞いていただいたり、なぜか都市伝説や怪談話をしたりと雑談をする機会も多く大変お世話になった先生で…。だからと言って恩師に甘えすぎてはいけないなぁと思っていました。ですが、今回の稽古場に入ってみて分かったことは、私以外のみんなのほうが距離が近い! だって、私、“いくちゃん”なんてまだ呼べないですもん(笑)。外部の稽古場では「先生」という存在として気を張ってなくて緩めで、“楽しそうにやってるな、先生”って思っています(笑)。

◆宝塚退団から半年 毎日感じる原点に戻ったような新鮮さ

――退団から半年が経ちますが、この6ヵ月は早かったですか?

真彩:う~ん、どうなんでしょう。早い気がする! この半年、本当にたくさんの方にお会いして、カルチャーショックを受けて受けて受けて!みたいな(笑)。ラジオドラマの現場では、キャストの皆さんに出会った時に、“うわ~、声だけでこれだけ芝居できるんだ~。くー負けた~! 勉強が足りない自分!”って感じましたし、対談連載でミュージカル界の先輩にお会いして、芸の道に入ってよかったなぁって改めて感じたり。今は毎日、やりたい事の原点に戻ってきたな、“外の世界に出た。これから始まるぞ!”という気持ちを感じています。

――卒業してから、大きく変わったことはありますか?

真彩:料理の腕は上がったかもしれません。もともと自炊が好きな人間ではありましたが、宝塚時代は自宅って、帰ってお風呂に入って寝る場所になってしまっていて。今はいろいろ時間をかけてご飯を作ったり、テレビを見たり、台本読んで考えたりと、過ごす場所になっているのが、これまでなんでもないことを全然してこなかったので、すごく不思議で新鮮です。あとは、宝塚在団時は劇団から近い場所に住んでいたのですが、今はいろいろな稽古場に移動する際に、人を見る機会が増えて、“自分って、いろんな人の中で生きているんだな~”ってすごく感じます。

――来年で初舞台から10年。今後はどのような歌と向き合い、女優さんになっていきたいですか?

真彩:私、いろんな歌と出会いたい。これだけが好きとかではなくて、胸がときめく音やリズムはジャンル問わず好きなんです。なので、自分からチャレンジし続けるのは当たり前として、これを歌ってくださいと誰かに言われた時に、“あ、こう来たかー!”って想像を超えて、ダイレクトに心に訴える歌を歌える人間になりたいです。女優さんとしては、私が子どもの頃に新妻聖子さんという存在を知りこの世界を目指したので、私も自分の存在で宝塚やミュージカルを目指したいって思ってもらえたり、誰かの道になるような、恥ずかしくない存在でありたいです。

あとは必要とされる人間でありたいとも思います。必要とされるためには自分が努力しなければならない。成長し続けなければいけないなと常に思っています。“そうでなければやめてしまえよ、自分”みたいな思いでいますし。ジャンルにとらわれず、クリエイティブな人でありたいというか。創造していく人でありたい。常に上を目指して、誰かに楽しんでもらいたいという思いを一番に、これからも舞台というお仕事をメインに生きていけたらいいなと思っています。(取材・文:編集部 写真:松林満美)

 ミュージカル『ドン・ジュアン』は、大阪・梅田芸術劇場 メインホールにて10月7日~17日、東京・TBS赤坂ACTシアターにて10月21日~11月6日上演。

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