『ナウシカ』では苦い経験も 海外版ポスターで振り返る「スタジオジブリの名作たち」

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20210810_ジブリ映画の海外版ポスター
日本版と雰囲気が異なるジブリ映画の海外版ポスター  写真提供:AFLO

 夏の『金曜ロードショー』(日本テレビ系/毎週金曜21時)といえば、毎年恒例のジブリ特集。今年は、13日から『もののけ姫』、『猫の恩返し』、『風立ちぬ』が3週連続で放送される。国内外でも高く評価されるジブリ作品だが、実は、海外版のポスターは雰囲気が異なる。特に『風の谷のナウシカ』においては、苦い経験もあるようで…。ジブリ特集放送を機に、歴代作品の海外版ポスターを振り返ってみたい。

■ロマンス色強い『風立ちぬ』

 まずは、『金曜ロードショー』でも放送される『風立ちぬ』(2013)。日本版ポスターでは、ヒロインの里見菜穂子が高原で絵を描いている様子が切り取られているが、アメリカ版では菜穂子と主人公・堀越二郎がキスをするシーンに変わっている。

 「いざ生きめやも。」のキャッチコピーとともに、りりしい菜穂子の姿を映し出した日本版は、まさに生きる力を感じさせる迫力がある。その一方で、少し淡い色合いとなったアメリカ版では、よりロマンスを感じさせる仕上がりに。菜穂子と二郎の顔が見えないのも特徴だ。

 英語版の吹き替えキャストは、二郎役に『インセプション』のジョセフ・ゴードン=レヴィットが起用されたほか、『クワイエット・プレイス』でおなじみのジョン・クラシンスキー&エミリー・ブラント夫妻が、それぞれ本庄季郎と菜穂子の声を演じた。

■よりミステリアスな『千と千尋の神隠し』

 第75回アカデミー賞長編アニメーション賞に輝いた『千と千尋の神隠し』(2001)。豚になった両親が消え、暗闇が増したアメリカ版ポスターでは、小さく映る街のミステリアスさをより感じさせ、謎の世界に立ち向かう一人の少女にフォーカスしたような仕上がりとなっている。右下にぼうっと浮かぶカオナシの存在がなんとも不気味だ。

 ちなみに、本作の全米配給を行ったのが、ウォルト・ディズニー・スタジオ。特に尽力したのが、宮崎駿監督と1987年から交流があった、『トイ・ストーリー』の監督ジョン・ラセターだった。米TIMEによると、本作の知名度を上げるために、米Variety誌へ全面広告を出すなど、さまざまなキャンペーンを展開したという。米国の日本アニメ研究の第一人者であるスーザン・ネイピア氏は、同記事で、この宣伝活動がアカデミー賞につながった理由の1つだと語っている。

■『風の谷のナウシカ』の苦い出来事

 しかし『千と千尋の神隠し』がアカデミー賞を取るまで、スタジオジブリ作品の海外配給には苦い出来事が多数あった。『風の谷のナウシカ』(1984)もそのうちの1つ。アメリカ版のビジュアルを見ると、ナウシカらしき女性が端に追いやられ、男性キャラクターが中央に配置された派手なデザインになっている。タイトルも『WARRIORS OF THE WIND(風の戦士たち)』と少々ずれたものに。

 叶精二による『宮崎駿全書』(フィルムアート社)では、「改悪英語版」として一連の事件について記されている。簡単に言うと、宮崎監督が知らない間に、英語吹き替え版が作られていたのだ。さらに、宮崎監督の猛抗議もかなわず、本編が116分から97分にカットされ、キャラクター名も変更に。まさに「改悪英語版」となってしまったが、2005年にディズニー・ビデオから、直訳した『NAUSICAA OF THE VALLEY OF WIND』という英題で、ノーカット英語吹き替え版のDVDとVHSが発売されている。

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