石田ひかり、デビュー35周年 現場でも家庭でも「お母さんという生き物になっている」

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『ウェンディ&ピーターパン』石田ひかりインタビュー 20210707実施
石田ひかり  クランクイン! 写真:高野広美

 『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)での主人公の母親役や、『きょうの猫村さん』(テレビ東京系)での村田の奥さん役など、さまざまな役柄で確かな存在感を放つ、女優の石田ひかり。今年デビュー35周年を迎え、プライベートでは2人の娘の母親としての顔も持つ彼女に、これまでの道のりや現在の思いを語ってもらった。

◆本場ロイヤル・シェイクスピア流の演出体験に「本当に幸せなこと」

 黒木華とHey!Say!JUMP・中島裕翔がダブル主演を務め、堤真一らと共演する舞台『ウェンディ&ピーターパン』。名作『ピーターパン』をウェンディの視点から翻案し、英国ロイヤル・シェイクスピア・カンパニーで上演された作品がブラッシュアップされ日本初上演となる今作で、石田はウェンディの母、ミセス・ダーリングを演じる。

 “ピーターパン”には「大人になりたくない少年」というイメージが強く、「実はどんなお話なんだろう、ちゃんと知らないなって思って探してみたら、いろんなバージョンが出てきたことに驚きました」と語る石田。演じるミセス・ダーリングは「すごく自立心が強くて、社会とつながっていたい女性。年子で3人産んで、ちょっと離れて4人目を産んでいるということは家庭から出ることもできなかっただろうし、(夫である)ミスター・ダーリングが非常に保守的な価値観の人で、やっぱり家庭にいるべきだっていう思いが強くて、彼女はモヤモヤしながら、それでも幸せを探しながら家庭で過ごしてきた」と説明。

 「この時代にはきっとそういう女性は多かったんじゃないかと思うんですよね。(社会に出ることを)想像しながら抑圧された気持ちを発散して、それが不満ではなく…。彼女は、みんなにとっていい形の着地点を見つけて旦那さんを説得できる。賢い人だと理解しています」。

 今回の演出は、本場ロンドンでの上演に続いてジョナサン・マンビィが務める。イギリスより来日した彼に、隔離期間を経て直接の指導を受けている。「知識量ですとか、芸術に対する思いとか、この作品に対するリスペクトとか、すべてが違います。時代背景など歴史から入っていくので、世界史の授業を受けているみたいで」と笑う。「何を聞いてもすぐ答えてくれるし、これがロイヤル・シェイクスピアのセオリーだと思うと、日本でこの演出が受けられるなんて本当に幸せなことだなって日々思います」と話す。

 稽古期間も充実した日々を送っている様子。「毎日素晴らしいお芝居を見せてもらって、このお稽古場にいられることが本当にうれしくて。堤さんは本当に頼もしいし、華ちゃんはなんといってもかわいいし、声がいいですよね! 裕翔くんは本当にキレイですね(笑)。かっこいいしすてきだし、見ていたいという気持ちにさせられる方です」と楽しそうな石田の様子からも、作品の出来映えに期待が高まる。

◆デビュー35周年 転機となった大林宣彦監督との出会いと『悪女』

 今年はデビュー35周年。「ははは、そうですか。長っ!」と笑顔。「いや~。とにかくよく35年もやってこれてるなって。本当に作品と人に恵まれた35年、幸せな35年だったなって思います。それに尽きます、私の35年は」ときっぱり。

 「1つ1つの作品に思いが確実にあって…。『ママハハ・ブギ』(TBS系)はオーディションだったんですけど、台本に私の役のところだけまだ名前が入ってないんですよ。絶対ここに名前を入れたいって、強い思いでオーディションに臨んで役をいただいたっていう思い出があります」としみじみ振り返る石田。

 そんな中、転機になった出会いを尋ねると「大林(宣彦)監督ですよね。18歳のときに、私を『ふたり』に使ってくださって。それがやっぱり1番大きかったですね。いまだに(大林監督の妻の)恭子さんや(娘の)千茱萸さんとやりとりがあって、ずっとつながっている。いろんな形で私の中にいてくださる存在です」。

 ドラマでは『悪女』(読売テレビ・日本テレビ系)が転機に。「以前、“あなたの中に神社を立てるとしたら、『あすなろ白書』でも『ひらり』でもありませんよ、『悪女』ですよ”ってある方に言われたことがあって(笑)。『あすなろ白書』や『ひらり』の神社ももちろん心の中にあるのですが、転機と言えば『悪女』だと。あぁそうなんだなって自分でも思っています」。

◆家庭でも現場でも「もうお母さんという生き物になっている」

 私生活では2001年に結婚、2人の娘を持つ石田。仕事と家庭の両立はどのようにしているのだろう。「今でもできてないです。娘たちも成長してきて、巣立つ日も近付いてきたので、この悩みもようやく終わるのかなと思いますけども…。どちらも中途半端だって感じが自分の中にあります」と意外な答えが。

 本作でのミセス・ダーリングや『監察医 朝顔』、さらには10月15日公開予定の映画『かそけきサンカヨウ』で志田彩良の母を演じるなど、母親役づいている石田。役に実生活の反映があったりするのだろうか?「う~ん。娘ではないので、なかなかそれはできないんですけど、でも自然に、やっぱり私はもうお母さんという生き物になっているんだと思います。普段から」とほほ笑む。「現場でも、困っている子や若い子が恥ずかしそうにしてたり緊張していたりすると、やっぱり声をかけてあげたくなるし、お腹すいてない?とか声をかけたり。昨日もアクション練習をしている華ちゃんに、“動画撮ってあげようか?”って言ったら、裕翔くんが『お母さんみたいですね』って(笑)。動きが体も心もお母さんなんだと思います」とにっこり。

 「オンとオフの切り替えも最近は作品によりますね。昔は現場離れたらすぐスイッチが切り替わりましたけど、子どもを産んでからは無理ですね。家庭のことは頭から抜けないです。現場でも、あれやって、これやっておいてってスマホを使って遠隔操作です(笑)」と母の顔を見せる。「家に帰ると台本を開く時間はほぼないですね。これは私の要領の悪さなんですけど…。なので移動時間が私にとってはとっても大事です」。

◆人生の“夏”を終え、迎える実りの秋に感じる楽しみと怖さ

 目の前で凛(りん)とした笑顔を見せる姿からは想像ができないが、来年50歳を迎えるという。「半世紀生きているんだって思うと、ちょっとびっくりするんですけど…。コロナでいったん立ち止まっていろんなことを考えたときに、14歳くらいで仕事を始めて、何の資格も持ってないし、ほかにできることがなにもないんですよね。現場がなければただの人なんだなっていうのをいやというほど知らされて…」と心境を吐露。

 「人生100年として、25年ずつ春夏秋冬で区切っていくと、今は夏までが終わった段階。これからは実りの秋。この50年がどういうふうにして実っていくだろう、どういうふうに熟成して晩年を迎えていくのだろうって、客観的に楽しみでもあり、なんにも実らなかったらどうしようっていう怖さもあります。とはいえ、生きてきたのは自分自身なので、その結果が少しずつ出て行くんだなって受け止めるしかないかなって」。

 「海外の方とお仕事をして、世界って広いんだな、人生っていろんなことができるんだなって実感しているところなんです。娘たちを見ていると、これから可能性しかない。いい人生を送ってほしいなって若い人たちにもエールを送るというか、本当に中間地点にいるのかなって思います」としみじみと語る。

 これからの活動について尋ねる質問に「やりたいことは次の事っていう気持ちです、いつも」と軽やかに笑顔を見せた石田。デビュー35年を迎えても、力まず自然体な好奇心と向上心で、女優として1人の女性として、ますます輝き続けてくれるに違いない。(取材・文:編集部 写真:高野広美)

 DISCOVER WORLD THEATRE vol.11『ウェンディ&ピーターパン』は、東京・Bunkamuraオーチャードホールにて8月13日~9月5日上演。

 映画『かそけきサンカヨウ』は10月15日より公開予定。

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