柳楽優弥、有村架純が語る “戦争体験のない世代”が、事実を知る大切さ

映画
20210806柳楽優弥、有村架純インタビュー
『映画 太陽の子』で共演した柳楽優弥、有村架純  クランクイン! 写真:ヨシダヤスシ

 30歳前後の俳優の中でも、特に高い実力と人気を兼ね備えた柳楽優弥と有村架純、そして三浦春馬さんが共演した、太平洋戦争末期を舞台にした『映画 太陽の子』。昨年8月15日にNHKで放送されたドラマとは異なる視点と結末で描かれる本作で、原子爆弾の研究に関わった若き研究者の修を演じた柳楽と、修と弟の裕之(三浦さん)を見守る幼なじみの世津を演じた有村にインタビュー。緊迫の場面となる海のシーンでの撮影秘話や、本作に出演することで改めて感じた「戦争体験のない世代が、事実を知る大切さ」について語った。

■一発撮りでの海のシーンは、カット後に拍手

――心に残るシーンがいくつもありました。特に印象的な、三浦春馬さんとの3人での海でのシーンは、映画では2ヵ所に登場します。

柳楽:(裕之が入水する)緊迫感のあるシーンの方は、朝方の撮影で時間も限られている中、海に入るという物理的に何回も撮れない条件だったので、前日にリハーサルをしました。物語としても大切なシーンですし、すごい緊迫感でした。

有村:カメラの方も一緒に芝居をしてくださっているような、臨場感のあるカメラアングルで、より迫力のあるシーンになっていました。長回しで撮ったんですけど、みんなの感情が途切れることなく、キャスト、スタッフ、それぞれの部署の人たちが一緒になって撮れたことをより感じたシーンでした。

柳楽:2つのアングルで一発撮りだったんです。海に入るので、自分たちも何が起きるか分からないし、海に入って春馬くんのところにたどり着くまでが、予想以上に前に全然進めなくて。そうした環境もいい緊張感につながったのか、みんなが自分のやることに集中していました。撮り終わったときには、その場で拍手が起きたんです。次の現場でもモニターを付けて、そのシーンをずっと流していました。キャストだけでなく、スタッフさんたちもモチベーションの上がる、団結のきっかけになるようなシーンでした。

■3人の「キャスティングがすごい」と感心

――何度も共演している柳楽さんと有村さん、そして柳楽さんが「ライバルだ」とお話しされている三浦春馬さん。3人の空気感が戦争ものでありながら、青春ものでもあるという本作の空気を作っています。

柳楽:春馬くんはみんなをまとめる力があるんです。

有村:そうですね。

柳楽:僕はそうしたいけど、やると空回るタイプで。春馬くんがいることによって、距離感がよりぐっと役柄に近づいていった感じがありました。あと、元々キャラクターと僕たちの距離感が、普段の距離感と重なる部分があったので、「キャスティングすごいな!」と思いました。春馬くんは、やっぱり心強いです。

有村:柳楽さんは、作品ごとに自然と何かが出ていて、それが周りを巻き込む求心力があるというか。役も作品も全部自分の引力で巻き込んでいくような核のある人です。そして春馬さんには、すべてを中和してくれるような感じがあって、すごく不思議な存在感がある。どこにも属していないような雰囲気があって、それがとても居心地が良かったです。誰とお芝居しても、雰囲気を作れてしまう方なんだろうと感じました。

――柳楽さんは核を持って周りを巻き込んでいくタイプで、三浦さんはどこでもフラットでいられる。全く違うタイプの役者さんだと。

有村:そうですね。だからバランスが良かったのかなと思います。タイプは違いますが、どちらも心地いいんです。

柳楽:有村さんは、やっぱり朝ドラのような大きなステージでしっかり結果を残してきた人からあふれ出る人間性だったり、現場の安心感だったりがあって、スペシャルな人だなと感じます。そういう人たちと一緒にいると、自分にもいい連鎖反応が起きている気がします。

■日本も原子爆弾の研究をしていたと知って

――そして、青春ものであり、やはり戦争ものでもあります。

柳楽:僕はこの事実(日本も原子の力を利用した新型爆弾を作ろうとしていた)を知らなかったので、参加できるならいろいろ勉強しなければいけないと思いました。

有村:私もそういった事実があったことを知らず、衝撃を受けました。黒崎(博)監督が十何年と企画を練ってこられた思いの強さもすごく感じましたし、戦時中のお話しではありましたが、きちんとした青春ストーリーでもあって、ひかれる部分がたくさんありました。

――柳楽さんは実際に研究をしていた役、有村さんは近しい人です。

柳楽:爆弾の作り方なんて全く知らなかったですし、ウランとかも関心を持ったことがなかったので、勉強会を開いてもらって、研究室のみんなで、役柄がどういうことをやっているのかという作業の説明を受けました。みんなのスタート地点が近かったので、一緒に学びながら前進できたのはラッキーでした。あと、黒崎監督からは、修は共感しやすい主人公ではない。特に後半になるにつれて、修を疑うような瞬間が増えてくる。難しいと思うけど、頑張ってと声を掛けられました。

有村:世津は科学者の修に近い存在ですが、観てくださる方たちにとっては親近感の湧くキャラクターだと思うので、なるべくネガティブに見えない方向を心掛けて、修と裕之、2人の幼なじみを愛おしく見守る、人間的な愛情を持つことをまず気を付けました。そして戦時下という厳しい環境で生きている人間なので、そうした環境と直面したときに、どう感じて生きているのかという葛藤も、しっかり考えていきました。

■戦争体験のない世代が、事実を知る大切さ

――先日、一般の方向けの試写会が行われましたが、「戦争ものを初めて観た」という若い方の感想が多くありました。

柳楽:そうなんですね。戦争体験をしていない世代が、それについて知識を深めて、こうした事実があったんだと学習していくことによって、「これは怖い」という恐怖感を持っていくことってすごく大事だと思うんです。撮影現場といえども結構リアルなものだったので、僕もきついと思う瞬間がありました。でも逆にそういうリアクションを持たないといけないと思うんです。

――きついと感じた方がいいと。

柳楽:知り合いの監督に、「ストーリーはもちろんだけど、戦争映画は怖い描写、拒否反応を起こすような描写があるべきだ」と言う人がいて、確かにと思うんです。観ることによって、そういうリアクションになるのは、むしろ必要なことなのかなって。

――本作を撮られた後、コロナ禍に見舞われています。観る側の受け止め方も変わるかと。

有村:いろんな方が、自分自身の持っている考え方を変えざるを得ない状況になって、戸惑いや混乱もいまだあると思うのですが、この作品を観て、未来を作るのは、やっぱり今の自分たちの行動、言動なんだと再認識しましたし、これからの子どもたちのために自分たちが社会を作っていかなければいけないなと。

――世津は戦争後の未来を見ている重要な人物ですね。

有村:未来の子たちに希望がないって、それほど悲しいことはないですよね。これまで生きてきてくれた方々が残した歴史を自分たちがつないで、下の子たちに受け渡していくということがみんなでできたら、よりよい世界を作ることができるのかなと。そういったことを一緒に考えていけたらいいなと思います。『映画 太陽の子』のような作品は、自分自身と向き合うことができる。すごく重要だと思いますし、私自身も観る方にも、無関心にはならないようにと願っています。

柳楽:重いからといって観るのを避けるよりは、観て、自分のアイデンティティーをしっかり持って過ごすことの方が、責任感もあって、僕は好きです。若い方にもぜひ観てもらいたいです。(取材・文:望月ふみ 写真:ヨシダヤスシ)

 『映画 太陽の子』は全国公開中。

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