クラブ火災を発端に暴かれる医療と政治の闇 アカデミー賞ノミネート『コレクティブ 国家の嘘』予告

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映画『コレクティブ 国家の嘘』
映画『コレクティブ 国家の嘘』場面写真 (C)Alexander Nanau Production, HBO Europe, Samsa Film 2019

 本年度の第93回アカデミー賞で国際長編映画賞と長編ドキュメンタリー賞の2部門にノミネートされたルーマニア映画『Colectiv(原題)』が、邦題を『コレクティブ 国家の嘘』として10月2日より公開されることが決定。予告編が解禁された。

 本作は、命よりも利益や効率が優先された果てに起こった国家を揺るがす巨大医療汚職事件の闇と、それに対峙(たいじ)する市民やジャーナリスト達を追ったドキュメンタリー映画。

 2015年10月、ルーマニア・ブカレストのクラブ“コレクティブ”でライブ中に火災が発生。27名の死者と180名の負傷者を出す大惨事となったが、一命を取り留めたはずの入院患者が複数の病院で次々に死亡、最終的には死者数が64名にまで膨れ上がった。事件を不審に思い調査を始めたスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」の編集長は、内部告発者からの情報提供により衝撃の事実に行き着く。

 その事件の背景には、莫大な利益を手にする製薬会社と、彼らと黒いつながりを持った病院経営者、そして政府関係者との巨大な癒着が隠されていた。真実に近づくたび、増していく命の危険。それでも記者たちは真相を暴こうと進み続ける。一方、報道を目にした市民たちの怒りは頂点に達し、内閣はついに辞職へと追いやられ、正義感あふれる大臣が誕生する。彼は、腐敗にまみれたシステムを変えようと奮闘するが…。

 監督は、世界各国の映画祭で上映され数多くの賞を受賞した『トトとふたりの姉』のアレクサンダー・ナナウ。地道な調査報道を続けるジャーナリストを追う前半から一転、映画の後半では熱い使命を胸に就任した新大臣を追い、異なる立場から大事件に立ち向かう人達を捉えていく。

 世界中の国々が現在直面している医療と政治、ジャーナリズムが抱える問題に真っ向から迫る本作は、ドキュメンタリーでありながら本年度アカデミー賞のルーマニア代表として選出され、国際長編映画賞と長編ドキュメンタリー賞の2部門でノミネートを果たした。そのほか、世界各国の映画祭で28の賞を獲得し、51ものノミネートを果たしている。

 予告編は、クラブ“コレクティブ”でライブ中に演出の花火が施設に引火し、一瞬にして壁を覆いつくすショッキングな場面で幕を開ける。続いて、被害者の親たちが「助かった子がなぜ12日後に死ぬんです?」と疑問を投げかけたり悲嘆に暮れる様子、ジャーナリスト達が地道に取材を続ける姿、国の腐敗と対峙する厚生大臣が葛藤する姿などが映し出されていく。

 それらの映像に加えて「我々は権力を妄信している」「メディアが権力に屈したら、権力は国民を虐げる。それがこの国と世界で繰り返されてきたことだ」「医療は一部の悪人ではなく全国民のものだ」といった映画のカギを握る重要な言葉も飛び交い、最後は「この事件は、あなたの国でも起きているー」というキーフレーズで終了。現代社会に生きる我々への大きな問いかけも感じさせる映像となっている。

 映画評論家の町山智宏氏は、早くから注目していたという本作について「間違った医療政策で人々が亡くなる。それは日本でも起こった。ただ『コレクティブ 国家の嘘』に感動するのは、新聞記者と大臣が事実を追及するからだ。それは日本では起こっていない」と語っている。

 映画『コレクティブ 国家の嘘』は10月2日より全国公開。

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