<ホラー映画ナビ>この監禁女がヤバい! 『RUN/ラン』決して娘を離さない毒母に戦慄【初公開カットあり】

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映画『RUN/ラン』
映画『RUN/ラン』場面写真 (C)2020 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

 次々と日本上陸を果たす最新ホラー映画から選りすぐりの注目作をピックアップ。独創的でスリリング、おもしろコワイ、観て損なしの「この1本」を独断と偏見でチョイスし、関連度の高い「おすすめ作品2本」とあわせてご紹介! 今回は行方不明の娘を探す父親を主人公にしたネット検索スリラー『search/サーチ』で話題を呼んだ気鋭監督アニーシュ・チャガンティ待望の新作が登場。世間を騒がす「毒母」をテーマに正統派サイコスリラーに挑んだ『RUN/ラン』がヤバい!

 不整脈と血色素症、ぜんそくに糖尿病、さらには両足の麻痺(まひ)。多くのハンデを抱え、毎日たくさんの治療薬を常用するクロエ(キーラ・アレン)は、車椅子で暮らしながら、それでも明るく前向きに生きる17歳の少女。地元ワシントン大学の入学試験を受け、今は憧れの寮生活に思いを馳せつつ合格通知を待っている。そんな彼女を優しく見守る母親ダイアン(サラ・ポールソン)は最大の理解者。学校に通えない娘にホームスクールで勉強を教え、家庭菜園で採れた安心野菜で食事を作り、片時も目を離さず世話を焼き、人生のすべてを捧げている。人里離れた森の一軒家の穏やかな日々。母娘は幸せだった。

 だが、クロエも年頃の女の子。台所に置かれたママの買い物袋からちょっとだけチョコを盗み食いしようとしたとき、袋の中に不審なものを見つけてしまう。自分が服用する薬の容器に母の名前が記されていたのだ。「なぜ?」と尋ねても「ママを信じて。愛してるわ」とほほえむダイアン。「すべてはあなたのためよ」。それは愛情たっぷりにクロエの思考を停止させる魔法の殺し文句だ。

 胸にくすぶる小さな疑惑。答えを探ろうにもスマホは与えられず、パソコンも自由には使えない。そこで工作が得意なクロエは、お手製のマジックハンドで高い戸棚に置かれた問題の容器をゲット。知恵を絞り、何とか薬の効能を調べあげる。だが、予想もしなかった真実が判明したとき、ダイアンの恐るべき毒母の本性が発動する。

 本作の見どころは何といっても女優2人の全面対決。献身的な溺愛と容赦ない束縛、紙一重で裏返る母性の両極端を演じ切るサラ・ポールソンの狂える暴走も圧巻だが、強い意志を秘めた聡明な娘役の新星キーラ・アレンが抜群に魅力的。実際にハンディキャップがあり、私生活でも車椅子を用いる彼女が、肉体面の不自由さを役作りのアドバンテージに変えて大熱演。母の手で二階の自室に監禁されたと知るや、こん身の力で窓から出て高い屋根を這(は)い、階段を転がり落ちる捨て身の脱出劇は、見ているこちらもつい、身を固くしてしまう迫真の名場面だ。

 母の呪縛から全力で逃走を図る娘と、どんな犠牲を払っても彼女を離さない毒母の熾(し)烈な戦い。車椅子の娘と保護者の母親に対する世間の視線、現代社会の倫理観を巧みにコスるユーモアも上等、衝撃の結末まで息もつかせずスマートに展開するサイコ映画の新たなる傑作だ。

 映画『RUN/ラン』は6月18日より全国公開。

【次ページ】小説家に自分好みの結末を要求…妊婦を襲う謎の女…この監禁女がヤバい! 作品をご紹介!

【この監禁女がヤバい! 『ミザリー』&『屋敷女 ノーカット完全版』を厳選紹介】

◆私好みの傑作を書け! 『ミザリー』(1990)

 雪山で交通事故を起こした流行作家が目覚めた場所は、彼のベストセラー恋愛小説“ミザリー”シリーズの愛読者を自認する中年女性の家。ところが、手厚い看護のお礼に新作の未発表原稿を読ませると、彼女は作中で“ミザリー”が死ぬ展開に大激怒。寝たきり状態の作家を拷問し、望む結末を書くよう脅迫する。原作はスティーヴン・キングの同名小説で、監督は同じキングの映画化作品『スタンド・バイ・ミー』で評価されたロブ・ライナー。作家のつづる原稿に一喜一憂し、激しく罵倒したかと思えば、喜び舞い踊る監禁サイコ女にふんしたキャシー・ベイツは、本作でアカデミー賞の主演女優賞を獲得。名脇役から一気にトップ女優の仲間入りを果たした。

◆赤ちゃんを出せ! 7月30日公開『屋敷女 ノーカット完全版』(2007)

 出産間近の妊婦がひとりで暮らす屋敷に、正体不明の女が侵入。まるで喪服のように全身黒ずくめの女は、無言で鋭いハサミを振りまわして妊婦を襲い、屋敷を訪れた彼女の肉親や警察を皆殺しに。そして、ついには力尽きた妊婦の腹にハサミを突き立て…。恋愛名作『ベティ・ブルー』でエキセントリックなヒロインを演じた仏女優ベアトリス・ダルがワンランク上の凶悪サイコ役に挑戦。血まみれの攻防戦の末、満身創痍(そうい)の女性ふたりに通う、常識を超えたある種の共感へと導かれる展開がショッキング。日本劇場初公開時に修正された超暴力シーンが復活し、今夏まさかのノーカット完全版でのリバイバル上映が決定した。

(文・山崎圭司)

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