<アカデミー賞総括>発表順の変更に驚き 受賞者スピーチ“時間制限”にも変化

映画
第93回アカデミー賞、The 93rd Annual Academy Awards、20210425
助演女優賞を受賞したユン・ヨジョン、第93回アカデミー賞授賞式にて (C)A.M.P.A.S.

 「今年のオスカー授賞式は、それ自体が映画のようになる」。授賞式のプロデューサーを務めるスティーヴン・ソダーバーグは、いつものアメリカ・ドルビーシアターではなくユニオン駅で開催される今回の授賞式について、そう語っていた。だが、“映画のよう”と感じさせたのは、最初のプレゼンターであるレジーナ・キングが外から優雅に歩いてくる間、この後に登場するスターの名前がクレジットとして流れた、オープニングの部分だけ。ほかにも、プレゼンターが候補者を紹介する時に作品の映像を見せるのでなく、それぞれの候補者のバックグラウンドを語るなどパーソナルにする工夫はあったものの、基本的な流れに変わりはなかった。

 そんな中で驚かされたのは、発表の順番だ。普通ならば作品賞の発表は最後と決まっているのに、今回は、主演男優賞、主演女優賞が発表される前に作品賞が発表されたのである。この2部門が飛ばされた瞬間、ツイッターには「亡くなった人が最後の華を取れるようにと変えたのか?」というようなコメントが出たりした。

 それがプロデューサーの意図だったのかどうかはわからない。もしそうだったとしても、結果的にはそうならなかった。最後に発表された主演男優賞を受賞したのは、ほぼ確実視されていた『マ・レイニーのブラックボトム』のチャドウィック・ボーズマンさんではなく、『ファーザー』のアンソニー・ホプキンスだったのである。しかも、ホプキンスは(時差があるからか)イギリスの会場にも出席しなかったため、受賞スピーチもなく、地味な終わり方になってしまった。

 ただ、ホプキンスの受賞自体は、実のところそんなに意外ではない。英国アカデミー賞でも彼はボーズマンさんを制してこの部門を受賞していたし、アメリカでは今年になって公開された『ファーザー』は、勢いがついているところだったのだ(今作ではフロリアン・ゼレールが脚色賞を受賞してもいる)。

 最近は、「この部門はホプキンスが取るべきだ」というささやきがちらほら聞かれるようにもなっていた。それでも、ホプキンスはすでに受賞していること、ボーズマンさんにとってはこれが最後のチャンスであることから、ボーズマンさんだろうと思われていたのである。

 一方、ヴァイオラ・デイヴィス、キャリー・マリガン、フランシス・マクドーマンドの大接戦だった主演女優部門は、マクドーマンドが受賞した。ほかの受賞者たちが(いつものように)感謝する人たちの名前をだらだらと述べる退屈なスピーチをした中、リラックスした感じで、短く、楽しいスピーチをした彼女は、実に格好よかった。

 リラックスしたスピーチといえば、『ミナリ』のユン・ヨジョンもそうだ。同じ部門のほかの候補者を褒めるのは誰もがやることだが、「私はちょっとだけラッキーだっただけ」「アメリカは韓国人の役者に優しくしてくれたのかしら」と言ったり、プレゼンターのブラッド・ピットに対して初めて会えた感激を述べたりしたのは、とてもチャーミングで心が温まった。

 今回は受賞スピーチの長さにも制限をかけなかったのも、これまでとの違い。だが、そのために、ある意味、従来の授賞式の悪いところがさらに強調されることにもなってしまった。オスカーに限らず、授賞式番組の視聴率はどれも一様に下がっているが、明日明らかになる視聴率は、決してうれしい数字ではないだろう。コロナで特別に困難が多かった年とは言え、来年に向けての反省点は多いといえる。(文:猿渡由紀)

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