『大草原の小さな家』お父さん役俳優の息子はホラー映画監督になっていた! ホラーは「父の影響」

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映画『ザ・スイッチ』メイキング
映画『ザ・スイッチ』のクリストファー・ランドン監督 父は有名俳優のマイケル・ランドン (C) 2020 UNIVERSAL STUDIOS

 全米初登場1位を記録するなど、大ヒットした『ハッピー・デス・デイ』シリーズの俊英クリストファー・ランドン監督が新たに手掛けた、史上最悪の“入れ替わり”を描くホラー映画『ザ・スイッチ』。さえない女子高生が中年男の連続殺人鬼と入れ替わるという前代未聞の事態を、スリルとユーモアたっぷりに描き出す。ランドン監督の父親は、日本でも人気を博したドラマ『大草原の小さな家』でお父さんを演じたマイケル・ランドン。ホラー好きだった父の影響を受け、自身もホラーを観始めたという監督に、父親とのエピソードも聞いた。

■ボディ・スワップ(入れ替わり)×スラッシャーの組み合わせに興奮

 『ハッピー・デス・デイ』のシリアルキラーとタイムループを掛け合わせた斬新な設定で、ホラーファンを大いに沸かせたランドン監督。今作の企画は、共同脚本のマイケル・ケネディがまさに『ハッピー・デス・デイ』を観ているときに思いついたというアイデアから始まった。最初に聞いたとき、「君、天才!」と思わず口にしたというランドン監督は、すぐさま参加を決意。一緒に練った脚本を『ハッピー・デス・デイ』でも組んだブラムハウス・プロダクションのジェイソン・ブラムに売り込み、映画製作が実現した。

 作品に大きな影響を与えているのは、ジョディ・フォスター主演で母と娘の入れ替わりを描いたドタバタコメディ『フリーキー・フライデー』(1976)だ。ただし、ホラー映画にとって大きな意味を持つ“13日の金曜日”に入れ替わる設定などは継承しつつも、ほかはランドン監督が言うように「全くの別物」。前者がストレートなコメディであるのに対し、本作には入れ替わりにプラスして“スラッシャー・コメディ”というひねったアプローチも加えられている。

 「僕が一番ワクワクしたのは、ボディ・スワップとスラッシャーものをくっつけたところ」と語るランドン監督。「入れ替わり映画にはかわいらしい作品が多いという伝統があるので、バイオレンスにすることでユニークさを与えたかったんだ」と続ける。その思いはケネディも同じで、2人は“遊び心を持って”、今回さまざまな奇抜な死に方を考案。どれも笑いが起きるように作ったという大げさなスラッシャーシーンには、ぜひ期待してほしい。かくしてR指定で笑える入れ替わり映画という、ありそうでなかった作品が完成した。

■キャラクターには自身の学生時代を反映

 本作は、見た目は中年男の殺人鬼に入れ替わってしまった内気なミリーが、元に戻ろうと奮闘しながら強くなっていく成長譚でもある。そうしたテーマに加え、彼女を救うために奔走する友人たちの姿も、思わずこんな友達がほしい! と願ってしまうくらい誠実で魅力的だ。

 「入れ替わりとスラッシャーの掛け合わせに加えて、今回(ホラーの慣習で)変えてみたかったのが、頭の切れるキャラクターをたくさん登場させようと思ったこと」と話す監督。「主人公の言ってることを、周りの人が信じるということがすごく重要なんだ。前作『ハッピー・デス・デイ』では、主人公を好きだから話を聞くという面もあったけど、ボーイフレンドは科学を信じるという理性的な人物でもあった。今回のミリーの友達も、一度ミリーであることに気が付いてからは、とにかく彼女を救うために動く。だから“友情が持つ力”や“友人たちの間にある忠誠心”は作品の大きなテーマになってるんだ」。

 こうしたティーンエイジャーの描写には、監督自身の学生時代も影響しているのだろうか。すると「まさにだよ!」とテンションを上げるランドン監督。「僕は学生時代とてもシャイで、ミリーのように人に頼ってしまうタイプだった。友達も少なくて、みんなとも離れてお昼を食べたりね。当時はゲイをカミングアウトしておらず、いじめられたりもした。今回は当時の要素やフィーリングをかなり入れているよ。悪いやつばかりが殺されるある種のリベンジ・ファンタジーになっていて、そうやって自分の過去を振り返ることができたのは最高の気分だった!」と笑顔を見せた。

■ハリウッドの変化「正しい方に向かっている」

 昨今のハリウッドは、キャストやスタッフの起用に公平さを促すためアカデミー賞のルールが変わるなど、これまでなかなか俎上(そじょう)に載せられなかった人種差別や多様性の課題に取り組むべく、変革期に突入中。そうした変化を、監督は肌でどう感じているのだろうか。

 「徐々に良くなって来ているし、ここ数年は特に劇的に向上していると思う。『#MeToo』もよかったし、『#Black Lives Matter』もアメリカでは大きなインパクトがあった。今まで間違っていたことを正そうという思いが強くなり、もっと映画やテレビなどの映像づくりで多様性を踏まえていこうとみんな意識していると思う。それは僕にとってもすごく重要なポイント。だからこそ今回は、ミリーの親友でジョシュというキャラクターが登場しているんだ。彼はゲイとして最初からオープンで、自信があり、ゲイだから何だ、というわけではまったくない。そして彼をメインキャラクターのひとりにしたとき、『メインでそのキャラはどう?』という人は今回一切いなかった。10年前だったらひとりぐらいはいたかもしれないから、良くなっていると思うよ」とコメント。

 別のインタビューでは、ジョシュにカミングアウトはさせたくなかったとも語っているランドン監督。LGBTQが自分のことを説明しなくても当たり前に自分自身でいること、それを体現するジョシュというキャラが普通にホラーに登場するようになったことは大きいだろう。一方、「ただ、まだ道は長い」とも。「僕は監督・脚本で表に立つわけじゃないから、ゲイだろうが関係ないけど、役者さんにとってはまだスティグマ(偏見)は存在するから、大変だと思うよ」と、役者陣の苦労をおもんばかった。

■父は『大草原の小さな家』でおなじみマイケル・ランドン

 ランドン監督の父は、1970年代~80年代にかけて日本でも放映された長寿ドラマ『大草原の小さな家』で、お父さんを演じていた俳優のマイケル・ランドン。ドラマでは良き父親ぶりを発揮していたが、監督も幼少期はよくセットに遊びに行き、父親の仕事ぶりを間近で見ていたそう。「父が幸せそうに仕事をしている姿を見て、すごくインスピレーションを受けたよ。こういう仕事をやってみたい!って」と振り返る。

 さらに意外なことに、父マイケルはなんとホラー映画ファンだったそう。

 「父はホラー映画が好きで、僕は父の影響でホラー映画を観始めた。子どもの頃はしょっちゅう一緒に観ていたよ。父もホラー映画を作りたいと言っていたけど、ドラマの父親役で有名だったから、なかなか難しかった。だから息子の僕がその思いをかなえているとも言えるね」と話した。

 最後に、お父さんが好きだったホラー映画を尋ねてみると、「えー何だったかなあ!? 僕が死んでから天国で聞いてみるよ」と笑いつつ、一生懸命思い出し、「本当にたくさん好きだったけど、サム・ライミ監督の『死霊のはらわた』がお気に入りだったね」と教えてくれた。

 意外なところからの影響でホラー映画監督になったランドン監督。確かな手腕と独自の感性で、これからも良質なエンタテインメント・ホラーを作ってくれるに違いない。(取材・文 編集部)

 映画『ザ・スイッチ』は4月9日より全国公開。

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