好スタート大河『青天を衝け』と人気朝ドラ『あさが来た』の共通点

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【NHK】大河ドラマ『青天を衝け』
NHK大河ドラマ『青天を衝け』第1回 渋沢栄一演じる吉沢亮(左)、従兄・渋沢喜作演じる高良健吾(右) (C)NHK

 吉沢亮主演の大河ドラマ『青天を衝け』(NHK総合/毎週日曜20時ほか)のことを、放送開始前には勝手に「不遇な大河」だと思い込んでいた。

 コロナ禍の影響で、前作『麒麟がくる』の終了時期がなかなか決まらない関係から、初回放送日が見えてこなかったこと。にもかわらず、次の小栗旬主演×三谷幸喜脚本の『鎌倉殿の13人』(2022年放送)は出演者が小出しで発表されるたびに話題になり、次の次の松本潤主演×古沢良太脚本の『どうする家康』(2023年)まで発表され、前から後ろから攻められる状況だったためだ。

 しかも、題材も、「日本資本主義の父」「新1万円札の人」渋沢栄一と、ちょっとわかりにくい。ネットで「渋沢栄一」と検索すると、関連ワードで「何をした人」と出るくらいである。

 さまざまな苦境からスタートする大河を勝手に応援したいと思っていたところだが、第1話(14日放送分)は、冒頭でいきなりさまざまな不安を払拭する仕掛けがなされていた。カメラ目線の北大路欣也が登場。「徳川家康です」と言い、次の次の『どうする家康』を匂わせたかと思えば、「鉄砲も伝来、私も使いましたよ。信長さまに勧められて」と、前作『麒麟がくる』との歴史的つながりまで盛り込むサービスぶり。さらに、家康が天下統一してからの260年を年表でビジュアル的に見せたうえでこう言う。

 「よく明治維新で徳川は倒され、近代日本が生まれたなんて言われますが、実はそう単純なものじゃない」「古くなった時代を閉じ、今につながる日本を開いたこの人物こそ、わが徳川の家臣であったと、ご存知だったかな?」と。なんて上手い説明なのだろう。

 そこから始まる物語は、大河ドラマというより、朝ドラに近い視聴感がある。なかでもある特定の作品…おそらく何の前情報もなく観た人でも「何かに似ている…ああ、『あさが来た』だ!』と感じるはずだ。

 それは、本作も『あさが来た』も、同じ大森美香氏の脚本だということが大きな理由である。2010年以降は、女性を主人公として、イケメンを多数取りそろえる「スイーツ大河」と言われるものが増え、逆に朝ドラは現代モノが減っていることから、大河が「朝ドラっぽい」と言われ、朝ドラは「大河っぽい」などと言われることがあった。

 また、宮藤官九郎氏の脚本の『あまちゃん』から『いだてん~東京オリムピック噺~』、中園ミホ氏の脚本の『花子とアン』から『西郷どん』、藤本有紀氏の脚本の『ちりとてちん』から『平清盛』など、同じ脚本家の朝ドラから大河ドラマへの流れも一つの定番にはなっている。

 しかし、朝ドラで描いた世界と時代が重なり、しかも登場人物も重なってくる今作は、非常にレアなケースだ。『あさが来た』で三宅裕司が演じた渋沢栄一を吉沢が演じるというギャップはなかなか面白い。さらに、大森氏自身が「日本の江戸時代において異質な人」という雰囲気があり、大人の包容力を持ちつつ、かつ新鮮な魅力のある大人の男性を必死に」探した結果、「発掘」した(『あさが来たファンブック』洋泉社)のが、大ブレイクを果たした五代友厚を演じたディーン・フジオカで、本作においても再び彼が”五代様“を演じるというのも、サービス満点のキャスティングだ。

 さらに、物語の作り方も『あさが来た』と非常に似ている。まず、つかみの強さ。本編スタートで、草むらから吉沢が飛び出し、スルーされ、追いすがり、対面を果たすのが、草なぎ剛が演じる江戸幕府最後の将軍・徳川慶喜である。そもそも草なぎが地上波連ドラに長らく登場していなかったことは、ドラマ界全体の大きな損失だと思っていたが、大河ドラマで「復帰」。多くの視聴者がいつ来るかと注目する中で、馬上から発せられた威厳ある声。すぐに一致しないほど低く落ち着いた声の主の顔が現れた瞬間、「おかえり!」と歓喜してしまった人は多いだろう。草なぎを惜しげもなく最初に出してしまうのが、実に心憎い演出だ。

 この出会いは『あさが来た』のあさと五代様の最初の出会いのような雰囲気もある。しかも、ここから渋沢と徳川慶喜それぞれの少年時代に話はさかのぼる。つまり、これは後に出会いを果たす「2人の物語」なのだ。

 また、『あさが来た』との共通点は、子どもをイキイキ描いていること。栄一の少年時代の強情っぱりの描き方は、「パチパチはん(そろばん)」に並々ならぬ関心を示しながらも「おなごに学問は必要ない」と怒られていたあさのようだし、「朝ドラ王道ヒロイン」感がある。

 そんな栄一に「責任というのは、大事なものを守る務めだ」と教えてくれるのは「とっさま」(小林薫)で、「人は生まれた時から一人じゃない。いろんなものとつながっている。だからみんながうれしいのが一番」「人の思いを考えるように」「まずは自分の胸に聞いてみること」などと教えてくれたのは「かっさま」(和久井映見)だ。

 さらに、そうした父母の教えがリアルに心に響き、その後の人生における「指針」となるきっかけを与えてくれるのが、玉木宏が演じる砲術家・高島秋帆である。そう、『あさが来た』の新次郎さんだ。

 「罪人」としてとらえられた高島は、牢の壁ごしに、栄一にこう言う。「このままではこの国は終わる。皆がそれぞれ自分の胸に聞き、動くしかないのだ」「誰かが守るしかない」。

 ここで父、母の言葉が重なってきた栄一は高らかに叫ぶ。「俺が守ってやんべ! この国を!!」。

 『あさが来た』であさに「ファーストペンギンになれ」と言ってくれた役割が、本作の栄一にとっては、新次郎さんを演じた玉木宏というわけだ。

 主人公の置かれた環境や思考回路・行動パターンという「必然」と、影響を与える人物との出会いという「偶然」を掛け合わせることで、そこに「運命」を感じさせる上手さは、大森美香脚本ならでは。『あさが来た』に渋沢栄一が出ていたわけだから、『青天を衝け』にももしかして波瑠が登場したりして?…なんて妄想もしつつ、『あさが来た』の世界観とのつながりも含めて楽しんでいきたい。(文:田幸和歌子)

<田幸和歌子>
1973年生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌等で俳優などのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムをさまざまな媒体で執筆中。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)、『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)など。

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