『銀魂』空知英秋は「完全に銀さん」 担当編集が“好きになっちゃう”人物像明かす

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『銀魂』歴代担当編集座談会
『銀魂』座談会に登場した歴代担当編集  クランクイン! 写真:M.TOKU

 1月8日に公開された映画『銀魂 THE FINAL』が、初週の週末動員数で『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』を制して1位を獲得する快挙を達成。原作漫画もシリーズ累計発行部数5500万部超と、多くのファンを持つ。そんな人気作の生みの親であり、笑いと感動を届けてきた漫画家・空知英秋とはどんな人物なのか。作品の立ち上げにも関わった大西恒平氏をはじめ歴代の担当編集が映画・漫画の裏話や続編の可能性などを話す座談会で、空知の“人たらし”な人物像が見えてきた。

■締め切り前は「世界で1番嫌い」 なのにもう1回好きになる

――編集から見た空知英秋さんはどういう方でしょうか。また、担当中に「すごい」と思ったエピソードなどがあればお聞かせください。

初代担当・大西:出会いは20年くらい前、漫画賞に投稿されてきまして。『だんでらいおん』という作品だったんですけど、僕はその時入社2年目で、賞を獲った新人作家さんを担当できる権利がありました。(普段の空知先生は)作品のまんまというか、いつも僕たちと漫画でキャラたちが話しているような口調(※1)で話してますね。

※1:漫画の作中や作者コメント欄などに掲載されている空知と担当のやりとりには仲のいい友達のような印象を受けるものが多く、タメ口の暴言やいがみ合いに発展することも珍しくない。

2代目担当・齊藤優:器が超デカい。『銀魂』って死ぬほど原稿の納品が遅いので、ヤバい時は担当も絵を描くんです。僕も効果音などを文字で表現する「描き文字」を描いたことがあるんですよ。で、空知先生が原稿チェックしている時に「おい、誰だ! この汚ねえ描き文字(を描いたのは)!」と声を荒げたので、「それ僕ですね」と言ったら、「齊藤さんかよ! じゃあ、しょうがねえな」と。

9代目担当・井坂尊:それ、器がデカいんじゃなくて原稿が遅いだけですよ(笑)。

4代目&6代目担当・本田佑行:漫画家としてもすごいところはもちろんあるんですけど、やっぱり“人間味”がすごく強くて。締め切り前は(空知先生のことを)、ほんとに世界で1番嫌いになるんですよ。でも、終わった後に打ち合わせに行くと、「すいませんでした! 今週はいけると思ったんですけどねっ」と。「来週はどうですか…?」と聞くと「大丈夫です! 頑張ります! 飲み行きましょっ!」って言われると好きになっちゃうんですよね、もう1回。その懐の深さみたいなものはやっぱりすごい。

5代目担当・松尾修:人たらしがすごいですよね。

本田:そう、完全に銀さんなんですよ。

8代目担当・真鍋廉:次は信じてみようかなっていうのを毎週繰り返しながら、やってました。

井坂:でも、無茶苦茶に見えるけどすごい理論派で。漫画も流行ってるものをちゃんと読んで「この作品はここがいい」という話は打ち合わせの時にしてました。

齊藤:新連載が始まった時とかに「これ、どうですか」って聞くと、シンプルなことを言うんですけどめちゃくちゃ芯を食ってて、パッと見で本質を見抜いちゃう。あれはすごいセンスだな。

大西:客観視する力がすごい。ニュースとかを見てて世の中を客観視して分析して、それを作品の中で生かしてる。そういうことに時間を割いてネームが遅くなるのかな…プラスに解釈すると(笑)。

本田:(原稿を)落としてはないですね。

齊藤:みんな打ち合わせは楽しかったよね。

本田:めっちゃ楽しかった。しゃべってるだけで面白いですもんね。

大西:人徳だよね。「しょうがないから付き合ってやるか」と思わせるものが、空知先生にはあるかもしれないですね。

■『銀魂』は「高級フランス料理というより、くさや」

――担当編集が考える『銀魂』の魅力とは?

齊藤:似ている漫画がないところですね。

井坂:「俺たちの『銀魂』感」というんですかね。遠くへ行かないというか。汚いことやるし、ふざけてるし、売れすぎないし(笑)。『ONE PIECE』とか『鬼滅の刃』ぐらいになると「みんなの」って感覚だけど、『銀魂』は「俺は分かってる」という感じがファンにとっていい。トガってるぶん、理解できるとめちゃめちゃ楽しい。

本田:生き急いでいるところがオンリーワンというか。真面目な展開でもギャグでも、「今この瞬間、打ち切りになってもいい」という気持ちでやってる感じは、ほかの漫画では味わえないゾクゾク感がある。

大西:高級フランス料理というよりは「くさや」みたいな。

井坂:好きな人はめっちゃ好きっていう。病みつきになる。

大西:読み切り作品を描いてた時から、ファンレターの数は多かったです。アンケートは良くなくて、最下位とかとってるのに…なんでだろうって。だから、昔から濃いファンに刺さる作風なんでしょうね。

松尾:“『銀魂』だったらなんでもあり”という前例を作ったのがすごい。僕が漫画(担当)している時に(作中で)これ、誰に許可をとればいいんだっていう案件もあって(笑)。今回の『鬼滅の刃』のイラストもそうですけど、周りを巻き込んで全部『銀魂』にしちゃうのが“らしい”なと思います。

大西:(『鬼滅の刃』イラストを)10枚も描いちゃってるもんね。

内藤:全部描いたら、デザインの勉強になったって言ってました。

■『銀魂 THE FINAL』に全面協力した経緯

――『銀魂 THE FINAL』では空知先生が全面協力されていますが、そのきっかけやいきさつをお聞かせください。

7代目&10代目担当・内藤拓真:連載が終わっていたので暇だろうと思って声をかけたら本当に暇してて、ダイエットしてたみたいです。

本田:ゴリラの絵を描いてたよね?

内藤:そう。普通、作家さんって連載が終わるとアニメやゲームのキャラデザをしてくださいとかオファーが来るんですが、空知先生のところには、どうやら「ゴリラに倣って鋼のメンタルを手に入れよう」みたいな本のイラストの依頼しか来てなくて…。それが唯一の仕事だから暇だったんです、本当に。

松尾:ひどいなぁ(笑)。

内藤:でも、『銀魂』が最後なら関わりたいというお話はされていましたので。なら、原作・作画・声優「空知英秋」という感じにしたら面白いんじゃないですかという話をしました。声優は、1回渋られて…。若い頃に無理くり声を録らされたことがあって、「チーズ蒸しパンになりたい」っていうやつなんですけど、あれは本当に嫌だったみたいです(笑)。

井坂:今回の映画、僕が担当していた頃に原作で描かれていた部分なんですけど、「このシーンの時は(原稿を)14時間くらい待ったなー」というのを思い出して涙が出てきましたね。

本田:井坂、連載の最終回の近辺で、近藤(勲)が出てきた瞬間に「終わるつもりねえなこの人」と思ったって言ってたよね?(※2)

※2:「週刊少年ジャンプ」連載中にあと数回で最終回だと発表したにもかかわらず近藤勲とゴリラが結婚するエピソードが始まり、結局予定通りに完結させることができなかった。

井坂:映画の最初にちょっと出てきますけど、ゴリラの結婚式を始めた時に「こいつ終わらせる気ねえじゃん」と。で、実際に終わらなかった…というより、原稿を取りに行ったら『テニプリ(テニスの王子様)』の歌も始まってたから「頭おかしいのか?」と思って(笑)。

真鍋:僕が担当の時に本誌(週刊少年ジャンプ)でいつ終わらせるのか決めたはずだったんです。その後、井坂さんに担当交代して、案の定終わらなくて全部ブン投げた形に…。だから、僕も(映画を見て)うるっときたんですけど、どっちかというと申し訳なさというか、「関わってくれたすべての人にごめんなさい」という気持ちで見てました。

齊藤:映画を見て、ようやく「(『銀魂』って)こういう話だったんだ!」って。(漫画は)足かけ何年もかけて読むので、それをキュッとまとめてくれてた。

本田:読んでると、載ってる媒体もページ数もどんどん変わっていくから、頭がすごくこんがらがってたんですけど、映画を見て初めて「銀魂ってこういう終わり方したんだ」って知りました。

大西:うまく映画でまとめてくれてた。漫画の最後の方は真剣に読んでなかったんですが(笑)、映画を見るとグッときましたね。

本田:『銀魂』の最終回は映画だったんですね…。

■『銀魂』続編の可能性 「20年後くらいにお金が全くなくなったら」

――今回の映画で本当に『銀魂』シリーズが完結するのかどうか、ファンにとって最も気になる部分だと思いますが、続編の可能性はありますか?

内藤:まったくわかりません。もし新作があるとしたら、ジャンプの目次コメントで空知先生自身の言葉で帰還を報告されると思うので、それを待っていただければと思います。

大西:続編はないと思いますよ。でも、もしかしたら20年後くらいに空知先生がお金が全くなくなったら、なんか…。

松尾:『銀魂2』みたいな。

大西:『帰ってきた銀さん』みたいな(笑)。

 空知の人柄がよく分かる今回の座談会、編集者たちは空知について口々にぼやきながらも、その表情は終始笑顔だった。大西氏はまた「映画が製作されたのも、(空知先生が)制作陣とファンの方々に愛されてたから」と述べている。(取材・文・写真:M.TOKU)

 映画『銀魂 THE FINAL』は現在公開中。

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