石橋静河、デビューから5年 女優として大切にしたい――“考えること”

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映画『人数の町』石橋静河インタビュー
石橋静河  クランクイン!

 2015年に舞台『銀河鉄道の夜 2015』で女優デビューを果たした石橋静河。その後は、実力派映画監督のもと、質の高い作品への出演を重ね、映画やドラマへの出演が増えている。最新作映画『人数の町』では、中村倫也と共に“考えることを放棄した人々が住む町”に違和感を覚え、逃げ出そうとする女性・紅子を演じた。石橋にとって考えることとはどんな行為なのだろうか――。その回答から彼女の女優業に対する思いが垣間見えてきた。

◆“家族”に対する思いに感じたヒロインとの共通点

 『人数の町』で石橋が演じる紅子は、失踪してしまった妹とその娘の行方を捜す普通の女性。ある事件が映し出されたニュースをきっかけに、妹が奇妙な町に住んでいることを知る。その町は、簡単な労働と引き換えに衣食住が保証されているが、そこは人が“考えること”を放棄してしまうような世界だった。

 台本を読んだ石橋は「私は町の住民ではなく、こういう町があったら嫌だなと思う役柄。おかしいと思いながら飛び込んでいく女性だったので、素直に自分が感じたことを表現していけばいいのかなと思いました」と共感できる部分が多かったという。

 しかし、人が考えることを放棄させられるような町。そこに飛び込むことにはリスクが伴う。「確かに怖いことかもしれませんが、紅子は妹を助けたいという気持ちがありました。私にとっても家族はとても大切な存在で、最優先されるものなので、気持ちは理解できます」と家族の絆の大切さを説く。

◆女優として大切にしたい――“考えること”

 石橋にとって“考えること”とはどんな意味を持つのだろうか。 

 「頭でっかちになるのは危険ですが、しっかりと自分の中で考えを確立することは、とても大切なことだと思います。何かに違和感を覚えたり、疑問を持ったりしたとき、それを相手としっかり話せる関係性を築くことも大事。もしそういう行為を奪われるなら、それはかなり危険なことだと思います」。

 こうした考えは、石橋が女優業をする上でも非常に大切にしているという。「作品の世界観を作っているのは監督であり脚本だと思うので、自分がやることは、そのお話の中にいる一人の登場人物としてしっかり役割を果たすことだと思う」と自身が考える女優としての立ち位置を明確にする。

 しかし一方で「だからと言って、演じる自分が役柄に対して考えることをやめてしまうのは違うとも思うんです」と述べると「もちろん役者ができることって少ないと思うのですが、しっかり役に向き合って思ったことを、ディスカッションできる場があるのは、とても幸せなことだと思います」と語る。

 そのバランスは「とても難しい」というが、モノづくりにおいて、相手と意見のキャッチボールができることは素晴らしいことであり、石橋自身しっかり意見を言い合えるように「力を蓄えていきたい」と未来を見据える。

◆デビューから5年… コロナ自粛期間を経て芝居へのスタンスも変化

 「力を蓄える」という意味で、女優業を始めて5年という歳月で出会った監督やスタッフ、キャストと過ごした時間は、石橋にとって「本当に密度の濃い時間だった」としみじみ語る。特にコロナ禍で撮影がストップし、振り返る時間ができたことで、その思いはより強くなったという。「お芝居を始める前は、自分の知らない世界を知っている人たちと出会えたらいいなと思っていたのですが、それがかなったことは本当に幸せです」。

 自粛が明け、石橋自身の芝居に対する考え方も変わったという。「これまで撮影現場ってすごく異空間で、いつも『よし行くぞ!』と気合を入れて臨んでいたのですが、いまはもっと地続きでいいのかなと思うようになりました。自分と違う人間を演じるのですが、でもやるのは自分の体と心なので、プライベートも全部つながっているのかなと感じるようになりました」。

 こうした考えを「力を抜いて芝居を楽しむ感じ」と表現した石橋。それを体現しているように感じられたのが、共演した中村倫也だという。「経験が豊富な俳優さんで、勉強するところがとても多かったのですが、なによりお芝居を楽しんでいるような感じがして、そこに乗っからせてもらいました」と充実した撮影を振り返っていた。(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
 
 映画『人数の町』は、9月4日公開。

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