アンジュルム・船木結、卒業決断の背景にあったのはハロプロで込み上げた「表現欲」<インタビュー後編>

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アンジュルム・船木結
アンジュルム・船木結

 ハロー!プロジェクト(以下、ハロプロ)のアイドルグループ・アンジュルムからの卒業を発表しているメンバーの船木結。グループの最新盤であり、自身最後の参加シングルになる「限りあるMoment/ミラー・ミラー」が今月26日に発売されるが、リリースを控える今、卒業に思いを巡らせながらハロプロでの経験を通して「自分の中にある表現欲に気がつけた」と振り返ってくれた。

■卒業後はダンスに限らず「表現」を軸にした進路へ

 曲ごとに色を変える歌声の器用さと、小柄ながら力強くみえるダンス。そして、大阪出身者ならでの軽快なトーク力を兼ね備えた船木。2013年9月にハロプロ研修生に加入、カントリー・ガールズ、アンジュルムで活動をして6年後の昨年10月にハロプロからの卒業を発表した。

 現在は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて6月に中止を余儀なくされた卒業公演が白紙の状況だが、卒業を決断した背景には、アンジュルムでの経験が深く関わっていたと話す。

 「卒業というと『辞める』と思われがちですが、自分なりには『表現を学ぶためのスタート』という意味もあるんです。ハロプロに入ったことで自分の中にある表現欲に気がつけたのもあり、振り返れば、ハロプロ研修生やカントリー・ガールズを経て、アンジュルムへの加入で新しい自分に出会えたのも大きかった気がします。

 アンジュルムは本当に個性的なメンバーばかりで、みんなと接しているうちにパフォーマンスだけではなく、私服や普段のメイクとかも徐々に変わっていったんですよ。ただ一方で、カッコよく踊りたいのに『今の実力では足りないのかな』と悔しさを感じる瞬間もたびたびあって、誰にも頼れない新しい環境に一人で飛び込めば『また一つ自分の殻を破れるのではないか』と思ったので、卒業を決めました」。

 昨年10月に投稿された「皆様へ」と題した自身のブログでは、卒業後の進路について「表現することという大きな枠の中で、活動中に最も気持ちが左右されたダンスを、現時点では選びいつかそれを自分の強みとして、活かせる職業に就くことを最終的な目標にしています」と報告していた。しかし、ダンスに限らない「表現」を追求したいのが真意だと話す。

 「ブログで『ダンス』と発表して、アンジュルムと兼任していたカントリー・ガールズの曲『ずっとずっと』で振り付けも担当したので『振り付け師になるの?』という声もありました。ただ、本音をいうとダンスはあくまでも選択肢の1つで、土台にあるのはとにかく『自分を表現していきたい』という気持ちなんです。

 ひょっとしたら文章を書くのも選択肢かもしれないけど、今はまだ、自分を出せる場所は何かと考えていて。卒業したらダンスを改めて基礎から習いつつ、カフェでアルバイトしてみたいとか小さな目標もあるんですけど、芸能界にもう一度戻ってくる可能性もゼロではないです」。

■初代リーダー・和田彩花から学んだ “引きの美学”

 最後の参加シングルのリリースを控え、これまでの活動を振り返る船木。アンジュルムとして思い出深かったライブを尋ねると、2018年4月から5月にかけて行われた「アンジュルム コンサートツアー 2018春 十人十色 +」を挙げる。

 「私と川村文乃ちゃんがアンジュルムへ加入してから、初めて参加したツアーだったので印象深いです。ただ、タイトルにある通り当時のメンバー10人の色が目立つツアー自体のコンセプトやグループの雰囲気は好きだったけど、自分自身はあまり好きではない時期でもありました」と振り返る。

 「当時の自分は未完成で先輩たちに追い付けず、パフォーマンス自体に満足していなかったんです。ようやくアンジュルムのメンバーとして自信が持てるようになったのはそこから約1年後、日本武道館で行われた(初代リーダーの)和田彩花さんの卒業公演でした。ちょうどその頃、心機一転を図ろうと髪を切ったんですけど、会場でファンのみなさん一人ひとりと目が合うようになった自分に気が付いたし、心から『成長できたんだな』と思えました」。

 メンバーとしての成長を明かした船木。アンジュルムで活動を共にしていたハロプロOG・和田からは、パフォーマンス面での「引きの美学」を学んだと話す。

 「メンバーみんな自分にとっては刺激を与えてくれる存在ですが、なかでも和田さんの影響は大きかったなと思います。アンジュルムは曲中にそれぞれフリーの動きをする場面も多いのですが、私はそんなときに、大きく腕を振ってみたりとか、体の動きを足していたんですよ。でも、和田さんはみんなが動いている場面で立ち尽くしていたり、マイナスの表現を心がけていて。マネしようともなりきれないんですけど、自分流に背中を見て学んでいました。

 そうしているうちに、カメラで映されている一瞬で伏し目がちな自分をみせたり、あえてステージ上で座ってみたりとかもできるようになりましたね。初めは恥ずかしさもあったんですけど、ライブ前のリハーサル室や本番で試したりしながら少しずつ実になってきて、表現の幅も拡がりました」。

 一方で、2019年12月26日の東京・LINE CUBE SHIBUYA公演で活動休止を迎えたカントリー・ガールズの一員としても活躍していた船木。同グループでプレイング・マネージャーを務め、2017年に芸能界を引退した嗣永桃子からも学んだことがあったという。

 「ももち(嗣永の愛称)先輩からは、思い返せばアイドルとしてというより、人として当たり前のことばかりを学んでいた気もします。カントリー・ガールズに入ったばかりの私は、本当に右も左も分からないままでしたけど、例えば、MCのさりげない一言でも『“嫌い”を使わずに“苦手”と言いましょう』とか、いろいろなことを叩き込んでくれて。言葉ではなく背中で、生きるための基礎を教えてもらいました」。

■同期の川村文乃は正反対の「ザ・アイドル」

 先輩たちから学んだことを糧に、アンジュルムへの加入後は新たなメンバーを迎え入れる立場にもなった。グループでの後輩にあたる、2018年11月23日加入の伊勢鈴蘭と2019年7月3日加入の橋迫鈴の印象も口にする。

 「迎え入れたといっても、私は自分から偉そうに何かを注意するという立場ではないんです。ただ、2人とも出会った当初とはだいぶ変わったし、むしろ学ぶ部分も多いんです。鈴蘭は初め、北海道から来て右も左も分からないまま、ホワホワしていたような印象でした。でも、実は人一倍強い野心を胸に秘めていて。負けず嫌いなのも伝わってくるし、そのための努力を無理なく続けられる姿は尊敬しています。

 一方の鈴ちゃんは根がしっかりしていて、アンジュルムのみんなで海へ行ったときには誰よりも用意周到に荷物を準備していたり、言葉に出さずとも行動に性格が出ているのはかわいらしいなと思って。ハロプロ研修生からグループへ加入したときも、一気に自分たちの曲を覚えるのは大変だったはずだけど、私たちの見えないところできっちりと仕上げてきていた姿には感動したし、鈴ちゃんならではの強みだなと思いました」。

 そして、船木にとってもう一人欠かせなかったのが、グループでは同期にあたる川村の存在だった。

 「かわむー(川村文乃の愛称)は見た目も性格も正反対で、私にないものをたくさん持っているんです。キャラや立ち振る舞いでいえば自分とは違い『ザ・アイドル』のような印象もあるんですけど、共通点もたくさんあって。仕事終わりにご飯を食べながらお互いの思いを話し合ったり、自分の裏側と向き合っているようでそのまっすぐさにはだいぶ救われる場面もありました。

 アンジュルムとして初めて参加したツアー『アンジュルム コンサートツアー 2018春 十人十色 +』でも、タイトルに『それぞれの個性を見つけていく』という意味が込められていても『自分たちにはコレというものがないよね』と相談しながら、自分にはみえない部分を教え合ったのも覚えています」。

 アンジュルムメンバーとしての生活から離れる日は、刻一刻と迫りつつある。卒業までのカウントダウンが進む中、最後に、船木にとっての「アイドルの理想像」を聞くと意外な答えが返ってきた。

 「これは自分の話になってしまうんですけど、自粛期間中でボーッと考える時間が増えてから『アイドルに向いてないかもしれない』と思うようになったんですよ。自分自身、ハロプロ研修生から7年近くアイドルをやってきたぶん、経験があるからこそ頑固になってきた部分もあるし、考えが凝り固まっているなと気が付いたんです。

 だから、私が言うのも少し変な気はするけど、今はもういろいろなアイドル像があるとは思います。アイドルの肩書きがあっても女優さんやモデルさんのお仕事をこなしている方もいるし、どんな分野にも切り込めて、いろいろなものにふれられるのは今あるアイドルの強みだなとは感じています」。(取材・文:カネコシュウヘイ 写真:ヨシダヤスシ)

 アンジュルムの最新シングル「限りあるMoment/ミラー・ミラー」は、8月26日発売。

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