夏の夜にふさわしい! 小芝風花と妖怪たちが癒やしてくれる『妖怪シェアハウス』の魅力

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【テレビ朝日】土曜ナイトドラマ『妖怪シェアハウス』
小芝風花主演ドラマ『妖怪シェアハウス』 (C)テレビ朝日

 コロナ禍で心底疲れている人は少なくないだろう。そんな疲れを吹き飛ばす、ひたすらかわいく楽しく、癒やしを与えてくれる心優しいホラーコメディーが、土曜ナイトドラマ『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系/毎週土曜23時15分)だ。

 小芝風花演じる主人公・目黒澪は、男にだまされ、貢がされ続け、男の発注ミスをかぶって会社をクビになった挙句、二股をかけられていたことが発覚。一文無しで住む家もなく、行き倒れていたところを「お岩さん」(松本まりか)に拾われ、妖怪たちが住む家に転がり込む。シェアハウスで出会った自由にふるまう妖怪たちと関わるなかで、澪がたくましく成長していく姿を描く。

■誰もが守りたくなる小芝風花の“困り笑い”

 本作の第一の癒やしは、なんといっても澪を演じる小芝だ。昨年放送の『トクサツガガガ』(NHK総合)主演あたりから、グンと垢抜けて綺麗になったと言われる彼女だが、持ち前の「育ちの良さそうなお嬢ちゃんっぽさ」が醸し出す真面目さ、野暮ったさ、無防備さは健在で、放っておけないかわいさがある。

 「シェアハウス」内の描写も多いため、パジャマ姿も多く登場するが、23歳で、まるで夏休みに親戚の家に泊まりに来た小中学生のように見える無邪気なパジャマの着こなしができる女優は、そういないのではないだろうか。短パンなど脚を大胆に露出する衣装も多いが、セクシーさはなく(誉め言葉!)、華奢(きゃしゃ)な脛(すね)が「少女」っぽさを際立たせている。

 おまけに、小芝は「言いたいことをなかなか言えない、困り笑い」が絶妙に上手い。『トクサツガガガ』もそうだった。「大丈夫です」と言っても、全く大丈夫じゃない感がビンビンに伝わってくる。最初は「人間と関わると、ここで暮らせなくなる」と警戒心をむき出しにしていた妖怪たちが、あっという間に心を許し、総力で守ろうとしてしまうのも、あの困り笑顔を見ると何ら不思議はない。

■人間より優しくデリカシーある妖怪チーム

 そんな澪を取り巻く妖怪チームがまた、とにかくかわいい。眼帯をつけた松本まりかを見た瞬間、同枠の前ドラマ『M 愛すべき人がいて』の田中みな実を思い出したが、こちらは“クズ男センサー”で澪にシンパシーを感じてしまう「心優しいダメンズ」である。尽くす性格や優しさからか、人間の姿のときには看護師をしている。

 また、謎の長身ターバン男だと思った大倉孝二は、実は「ぬらりひょん」。ターバンはあの特徴的な大きな頭部をあらわしているのか? なんて安上がりで素敵なんだろう。しかも、人間の姿のときは「弁護士兼経営コンサルタント」で「カレー屋の経営コンサルタント」もしているという。やっぱりカレー屋のターバンなのか?

 また、いつも一人、隅っこで酒を飲んでいる『まんぷく』の“塩軍団”毎熊克哉が演じるのは、「酒呑童子」。オークション会社に勤務していて、女にモテモテというが、口の悪さとコワモテで硬派な感じは、もはやかわいさしかない。唯一、誰なのか途中までわからず、気になりつつも「まさか…」と思っていた料理上手のおかっぱ頭・池谷のぶえは、「座敷童子」であることが判明。思わず「童子って…ババアじゃねえか!」(※ちなみに自分はほぼ同年代)と心の中でツッコんだ人は多かったろう。

 そんな妖怪チームのやりとりは、どこまでも優しく陽気である。お岩さんが突然、招かれざる客の人間・澪を連れてきてしまったときも、澪に向かってキツイ言葉を投げつけるわけでも、嫌な顔をするわけでもなく、困った様子でコソコソ話がわりに「おい、どうするんだよ?」などと「白目テレパシー」で会話する。澪をだます男たちはもちろんのこと、バイトする編集プロダクションの利己的な人間たちよりも、よほど優しく、デリカシーがある。

 また、澪をだました男に激怒した座敷童子に対し、えのきをサッと手渡すぬらりひょん、さらに座敷童子が怒りのままにエノキを縦に割くと、それをザルでサッと受け取る酒呑童子。そうしたおバカな細かい連携プレーの数々は、美しくすら見える。

 お岩さん+座敷童子+ぬらりひょんのキャピキャピガールズトークも、そこに加わらない硬派な酒呑童子も、まるごと平和でキュートだ。しかも、人間の姿ではそれぞれの分野で活躍している妖怪たちが、肝心の妖怪としてはあまり頼りにならないのも、なんだか拍子抜けで愛おしい。

 澪のピンチのときに、髪を逆立たせて額を光らせるという謎のアクションを見せるお岩さんに、「得意の占いをやれ」と言われるぬらりひょん、やる気満々で髪につけた風車をなぜか高速回転させる座敷童子。何の役にも立ちません。でも、みんなの思いだけは伝わってくるから、思わず心打たれてしまう。

■“ホラー” + “コメディー” を支える強力な布陣

 澪の周囲の「上から男」として、澪をこきつかう編プロ社長には大東駿介、シェアハウスの大家で陰陽師の末えいの神主には今年年始放送の『教場』(フジテレビ系)での名演も記憶に新しい味方良介。「二股クズ男の元カレ」には、ブレイク前の中村倫也にも似た塩顔&ゆるい色気を漂わせる柾木玲弥。第2話(8月8日放送)ゲストで「在庫管理のエキスパート」として働くヒラヒラアイドル衣装の陽キャ「番長皿屋敷のお菊」には、陰と陽を瞬時にスイッチできる佐津川愛美と、脇の配役まで完璧な布陣となっている。

 ちなみに、脚本を手掛けているのは、『ケイゾク』『SPEC』『民王』などの西荻弓絵と聞くと、オカルト+コメディーがこなれているのは納得である。また、演出を手掛ける豊島圭介はドラマ『怪談新耳袋』や、知る人ぞ知る名作『怪奇大家族』、話題の映画『三島由紀夫vs.東大全共闘~50年目の真実~』まで手掛けた監督と知ると、その作風の幅広さに驚かされる。合間に挟み込まれる池谷のぶえのわらべ歌も、宇治茶による「ゲキメーション」(劇中昔話)もまた、真剣に遊び倒している。

 しかも、ともすればドタバタのネタドラマになりかねない作品なのに、一貫して描かれるのは「お岩さんの時代から現代まで変わらない、尽くす女の性やミソジニー的男たち」「お菊さんの時代から現代まで続くセクハラなど、仕事する女性の息苦しさ」など、結構重めのテーマでもある。そうしたテーマが息苦しくのしかかるのではなく、下世話になるのでもなく、楽しく優しいホラーコメディに仕上がっているのは、脚本・演出の確かさと、うまい役者しか出ていないためだろう。

 爽やかな味わいは、昨夏に同局で放送されたドラマ『セミオトコ』にも似たテイストである。人間×人間ならざるものの優しく温かな交流は、いつの時代も夏の夜にふさわしい。(文:田幸和歌子)

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