“演技の鬼”ニコラス・ケイジ、振り切れ度MAX!な2010年代の作品5選

映画
映画『カラー・アウト・オブ・スペース―遭遇―』
映画『カラー・アウト・オブ・スペース―遭遇―』場面写真 (C) 2019 ACE PICTURES ENTERTAINMENT LLC. All Rights Reserved

 ニコラス・ケイジ、通称“ニコケイ”。『地獄の黙示録』(1979)の巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督の甥にして、『リービング・ラスベガス』(1995)でアカデミー賞主演男優賞に輝く演技派。無類のアメコミ好きで、来日のたびにマニアショップでフィギュアを爆買いする怪物級オタク。1本で2千万ドル(約20億円)の出演料を稼ぐ高給取りで、有名な幽霊物件を3億7千万円で気まぐれにお買い上げする桁外れの浪費家。4度の結婚と離婚、破産寸前で自宅差し押さえと、派手なゴシップにも事欠かず、名実ともにハリウッドで最も“キレてる”怪優のひとりだ。

 一方で、昔から妥協なき役作りで知られ、『バーディ』(1984)では戦争負傷兵の痛みを知るべく、麻酔なしで2本の歯を抜歯。『バンパイア・キッス』(1989)では吸血美女に惚れて正気を失った証に、本人曰く「全身の筋肉に拒絶されながら」生きたゴ●ブリを手づかみでムシャムシャと頬張った。

 役柄の深層に没入するメソッド演技法を極限までこじらせたような過剰なパフォーマンスは、“メガ・アクティング”と称されたり、あるいは自身では“西洋歌舞伎”と表現してきたニコケイ。最近は“ヌーヴォー・シャーマニック”という新語を編み出し、精霊と対話して答えを得る呪術師(シャーマン)のごとく、混沌から芝居の本質を掴む技を体得したと宣言。孤高の境地に達したニコケイは、2010年代も絶好調。さらにキレ味を増した暴走芝居で次々と名作・奇作に主演している。今回はそんなニコケイの特に振り切れた演技が観られる作品を紹介したい。

★『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』(2018)【復讐度120%】

 最近の代表作といえば、まずコレ。好きなニコケイ映画に『バンパイア・キッス』を挙げる玄人、新鋭パノス・コスマトス監督のもと、無口な木こりに扮したニコケイは、愛する妻マンディ(アンドレア・ライズボロー)をなぶり殺しにした極悪カルト集団に血塗られた復讐を挑む。

 下半身パンツ一丁で酒瓶片手に慟哭したかと思えば、憎悪を具現化した芸術的武器を黙々と鍛造。大殺戮の末に見た妻の幻影に、血まみれの顔でニッと笑う。一線を越えた者だけが知る、形容を拒否した表情のすごみ。撮影前に3番目の妻アリス・キムと突然の離婚を経験、行き場のないニコケイの激情が画面に焼きついた、文句なしの歪んだ傑作。

★『マッド・ダディ』(2017)【殺意度120%】

 「ここ十年で一番気に入っている」とニコケイが豪語する不条理ホラー。ある日突然、親たちが謎の衝動により凶暴化。我が子を殺し始めた。当然、さえない中年親父ニコケイも水を得た魚のように大暴れ。親である不満を口にしながら、走り、叫び、火に炙られ、全力の発狂芝居で子供たちを追い回す。日常との落差でゾッと笑わせつつ、後半は何とニコケイ自身が父親(ランス・ヘンリクセン)に襲われる側に。加害者と被害者、両極端なニコケイが楽しめるお徳な一編。

★『オレの獲物はビンラディン』(2016)【愛国心&信仰心度120%】

 ニコケイも仰天! 愛国心から単身、テロの首謀者ビンラディン捕獲に挑み、パキスタン当局に拘束された米人男性の奇天烈実話コメディ。日課の人工透析中、建設作業員ゲイリー(ニコケイ)は「ビンラディンに裁きを」と神からの啓示を受ける。使命感に燃えた彼は、ヨットと日本刀を入手。パキスタンの場所も知らぬまま、世直しの聖戦に立ち上がる。

 さすがのニコケイも「今までにないワイルドな役」と断言。監督は『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』(2006)など、社会風刺が十八番のラリー・チャールズ。監督自身が「変態的な意味でのアメリカンヒーロー」と評したお騒がせ妄想男の武勇伝を、ニコケイは喋りっぱなしのフルパワーで熱演する。

★『ドライブ・アングリー3D』(2010)【ゴールデンラズベリー賞直行度120%】

 カルト教団に娘を殺され、幼い孫娘を生贄に奪われたアウトローの復讐劇。あらすじだけ読めば、典型的なダークヒーロー型ニコケイ映画だが、実は主人公はトンデモ設定の訳アリ男。案の定、ワースト映画の殿堂ゴールデンラズベリー賞の最低男優賞にノミネート。同賞の常連候補ながら、毎回ギリギリで受賞を逃しているニコケイ。ファンとしてはうれしいような、じれったいような……。

 「R指定確実のクレイジーな残酷3D映画に出たかったんだ」とピュアすぎる本作への出演動機を明かしたニコケイ。当初はスキンヘッドにフルタトゥー姿で役作りを熱望したが、結局は通常営業モードのニコケイに。それでも、やりきった感は満点だ。

★現在公開中『カラー・アウト・オブ・スペース―遭遇―』(2019)【振り切れ度は人知を超える】

 会心作『マンディ~』の製作陣と再び組み、地獄と対峙する“ごく平凡な父親”を演じた新作は、いわばこの十年のニコケイの総決算。自宅の庭に隕石が落下したことで、家族は徐々に崩壊。妻と末っ子(演じるジュリアン・ヒリアードは『ドライブ・アングリー3D』でニコケイの娘に扮した女優アリアンヌ・マーティンの実息子!)は異形の怪物に変身。俺の獲物=ビンラディンよりはるかに恐ろしい正体不明の脅威を前に、ニコケイは『マッド・ダディ』よりもさらに深く、暗い狂気の淵へ落ちてゆく。

 監督は、脚本を手掛けた『D.N.A.』(1996)以来、長いブランクを経て近年復活した不遇の鬼才、リチャード・スタンリー。作家であるニコケイの父親が大ファンだったという怪奇文学の巨星H・P・ラヴクラフトの原作を基に、人間を変質させる「宇宙からの色」の恐怖をサイケデリックな色彩感覚で描き、新たな視覚体験へと誘う。

 「自分への挑戦として困難な役柄を選び、常にベテランでなく学ぶ立場でいたい。並外れたことをやり続ければ、唯一無二の存在になれる気がするんだ」と語るニコケイ。常に初心を忘れず、全力投球なハリウッドのシャーマン、ニコケイと一緒に人知を超えた異次元の世界へぶっ飛ぼう!(文・山崎圭司)

 映画『カラー・アウト・オブ・スペース―遭遇―』は公開中。

エンタメ最新記事一覧

特集

クランクイン紹介
スゴ得コンテンツ会員登録ボタン
クランクイン紹介
スゴ得コンテンツ会員登録ボタン
クランクイン紹介