山崎賢人、俳優デビューから10年「何度も壁にぶち当たった」

映画
映画『劇場』山崎賢人インタビュー 202003撮影
山崎賢人  クランクイン!

 俳優の山崎賢人が、又吉直樹の小説を映画化した『劇場』でどうしようもない“ダメ男”役にトライ。人生初の無精ひげを生やし、新境地を切り開いている。演じたのは、創作活動が思うようにいかず、恋人にもつらく当たってしまう劇作家の永田役。若手俳優のトップランナーとなった山崎だが、役者業に打ち込む中では「何度も壁にぶち当たってきた」と告白。「永田の表現者としての弱さに共感した」と胸の内を打ち明ける。壁にぶち当たり、見えてきた景色ーー。俳優デビューから10年。「正解がないからこそ、難しい。だからこそ、面白いと実感している」という役者業への熱い思いを語ってもらった。

■「こういった恋愛映画は初めて」新境地への思い

 又吉の同名恋愛小説を映画化した本作。友人と劇団を立ち上げた脚本家兼演出家を担う永田だが、その前衛的な作風は上演ごとに酷評され、今や解散状態。ある日、自分と同じスニーカーを履いている沙希(松岡茉優)と出会い、生涯忘れられない恋を経験していく。

 ボサボサ頭に無精ひげといった、永田の“ダメ男”としてのビジュアルもインパクト大。「行定(勲)監督とは、『髪型もひげも、永田の自己主張の表現。“これが俺だ”というアイデンティティーのあらわれだ』という話をしました。行定監督とはたくさん話し合いをしましたが、『どういう終わり方をしてもいいから、永田として動いてみて』と、すごく自由にやらせてくれるんです。一緒に永田像をつくっていくという過程、すべてが楽しかった」とイメージを覆す役柄を演じきり、充実感もたっぷり。

 永田と沙希の不器用な恋は、ヒリヒリとした痛みをともなうものでもある。これまで数々のラブストーリーに出演してきた山崎だが、「こういった恋愛映画は初めて。自分にとっても挑戦的な作品でした」と新境地への思いを吐露する。

 「実は、初めて台本を読ませていただいたときに、“恋愛映画だからやりたい”と思ったのではなくて、“永田を演じたい”と思ったんです。今思うと、そういう恋愛の方向に頭がいっていない感じって、ちょっと永田っぽいかもしれないですよね」と笑いつつ、「俳優も劇作家も表現者という意味では同じ。永田の表現者としての弱さにすごく共感ができた」という。

■俳優デビューから10年「何度も壁にぶち当たった」

 同世代の劇団の成功に嫉妬し、自分の理想と現実とのギャップにもがく永田。一方の山崎は、2010年にドラマ『熱海の捜査官』で俳優デビューし、2016年には映画『ヒロイン失格』や『orange ‐オレンジ‐』の活躍で第39回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。“サヴァン症候群”の青年を演じたドラマ『グッド・ドクター』や、大ヒットコミックの実写映画化で主演を担った『キングダム』など次々と新たなチャレンジを重ねるなど、順風満帆とも思えるキャリアの持ち主だ。一体、永田のどんな面に共感したのだろうか。

 すると「確かに僕は、これまであまり途切れることなく仕事をさせてもらっていますが、完璧だと思ったことも、これで満足だと思えたこともない。永田を見て『表現をしている人は、こういうことを考えているよな』と共感ができた」とストイックな姿勢を告白。「誰かと比べられてしまう仕事ということも同じ」だといい、他人の才能に嫉妬しそうになったときは、「いつでも、“俺は俺だ”と思うようにしている」と自身を鼓舞していると話す。

 10年にわたる役者人生においては、「何度も壁にぶち当たった」とも。とりわけ悩みが深かったのは、『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』や『羊と鋼の森』の撮影に身を投じた時期だという。「『ジョジョ』は漫画原作があって、“スタンド”という能力を発動させるなど、どうやって実写映画として形づくっていいのかすごく悩んだんです。『羊と鋼の森』は調律師の役を演じさせていただいて、専門職に打ち込む人を演じたのも初めてでした。このときもどう表現したらいいのかと、かなり悩みましたね」。

■俳優業は「正解がないから悩み続ける」も「正解がないからこそ面白い」

 突破口となったのは、先輩からの言葉。そして、自らの心に向き合う時間。「『ジョジョ』のときは、山田孝之さんが『漫画原作であっても、心が大事』と言ってくださって、すごく心に響いた。『羊と鋼の森』は悩みながら、コツコツと進むことで成長していく主人公だったので、考えてみると、それって自分の状況とも重なるなと思って。コツコツやってみようと思えた。正解がわからない仕事なので、その都度、悩み続けるしかないのかもしれません」と作品ごとに全身全霊で挑み、「結構、考えすぎてしまうことがあって、キツイなと思うときもありました。友達からは『賢人は(人生においての比重が)仕事が100パーセントになっている』と言われることもあった」と人気俳優の素顔は、周囲も認める“努力の人”だ。

 「正解がないから悩み続ける」と語るが、同時に「正解がないからこそ、面白い。自分がやる意味がきっとそこに生まれる」と役者業に意欲をみなぎらせる。「やっていると、照明もマイクもスタッフさんも見えなくなって、ゾーンに入るようなときがあって。そういったときはこの役を生きることができているなと感じる。この感覚は役者業にしかないものなのかなと思う。すごく面白いです」。

 また永田が同世代の劇団の芝居を見て涙を流すシーンにちなみ、「泣いた思い出」を聞いてみると、ほほ笑ましいエピソードが飛び出した。「昔、打ち上げで泣いてしまったことがあります。キャストって、前に出てあいさつをしたりするんですが、僕、人前で話すことがすごく苦手で…涙が出てきちゃって。今は話せるようになりましたが(笑)」と楽しそうに笑うなど、芝居に向かう真っ白な気持ちと同じく、こんなピュアな一面もなんとも魅力的。

 現在、25歳。30代に向けて、本作は大きな礎となりそうだ。「自分にとって挑戦的な作品だった。今の自分だからこそ、演じることができた役。今しか出せない、自分のすべてを出し切りました」と胸を張り、「『こういう役は意外だよね』と言われることがなくなるくらい、もっといろいろな役に挑戦していきたい。やったことのないことに向かっていく方が、楽しそうですよね」とニッコリ。道なき道を、山崎賢人はワクワクしながら走り続ける。(取材・文:成田おり枝 写真:松林満美)

 映画『劇場』は7月17日より全国公開、Amazon Prime Videoにて独占配信。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記

エンタメ最新記事一覧

特集

クランクイン紹介
スゴ得コンテンツ会員登録ボタン
クランクイン紹介
スゴ得コンテンツ会員登録ボタン
クランクイン紹介