『ジョーカー』ホアキン・フェニックス、『ロッキー・ホラー・ショー』フランクン・フルターの影響を明かす

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映画『ジョーカー』
映画『ジョーカー』場面写真 (C) 2019 Warner Bros.Ent.All Rights Reserved” “TM &(C) DC Comics”

 先日行われた第79回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で最高賞となる金獅子賞を受賞した『ジョーカー』。これまで数々のストーリーが紡がれていた稀代のヴィラン・ジョーカー誕生までの物語を描いた本作で、ジョーカーへと変ぼうする主人公アーサーを演じたのが名優ホアキン・フェニックスだ。作品の全ぼうが明らかになると、世界中から称賛が寄せられたが、彼は「期待を超える喜び、明らかに興奮した」とその反響の大きさに驚きを見せる――。

■『ジョーカー』の種は『ロッキー・ホラー・ショー』のフランクン・フルター!?

 ジョーカーと言えば、ティム・バートン監督の『バットマン』で演じたジャック・ニコルソン、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』のヒース・レジャー、デヴィッド・エアー監督の『スーサイド・スクワット』のジャレッド・レトなど多くの俳優が演じてきているが、ホアキンは、ヒースが演じたジョーカーについて、面白い発言をする。

 「僕は公開時にヒースのジョーカーを観ており、よく覚えていると思い込んでいたんだ。あのキャラクターはすごくパワフルで素晴らしい解釈だったから。でも、この映画の撮影を終えたあと、再度観返してみたら、実はほとんど映画のことを覚えていないことに気づいた。そのことこそが、ヒースのジョーカーがどれほど素晴らしいかを示している。彼は少ないシーンで、キャラクターの心理的、感情的な幅広さを全体像として伝えることができたということなんだ」。

 とは言うものの、本作でホアキンが演じたジョーカーと、ヒースが演じたジョーカーは、アプローチ方法や描かれ方は真逆と言ってもいいだろう。ホアキンは「正直、ジョーカーをどう演じたらいいか分からなかった」と胸の内を明かす。そんな中、(劇中のコメディ番組)『マレー・フランクリン・ショー』の撮影しているときに、突然あることに気がついたのだという。「今の僕は、自分が子どものころから大好きだった『ロッキー・ホラー・ショー』の主人公フランクン・フルターを演じているんだと気が付いた。フランクン・フルターはいつか演じることができたらと願っていたキャラクターだった。オー・マイ・ゴッド! 僕は完全に影響を受けていた、とね」とアーサーという役の種を明かす。

 ホアキンは、アーサーへのアプローチ方法として、大幅に体重を落としたことが報じられた。「アーサーは人生に決して満足したことがない人間。いつも何かを渇望している。減量は、そういうフィーリングを僕に与えてくれた。さらに自分の体を極端なところに持っていくことで、力がみなぎってくる感じを受けたんだ。このキャラクターを作り出すうえで、大きな意味合いを果たしてくれた」と満足そうに語る。

■これまでアメコミ作品に出なかったワケ

 長いキャリアを持つホアキンにとって、コミックのキャラクターを演じることは初めて。これまでスーパーヒーローが登場するコミック原作の実写映画化には「動機がクリアに描かれているため、複雑な要素がない。すべて見え見えに感じてしまう」と魅力を感じていなかったという。しかし『ジョーカー』では「役を演じることで、これまで知らなかったことが学べる気がしたんだ。簡単に答えが出ないテーマもあり、人間の心理も複雑だと思わせてくれる」と彼の知的好奇心をくすぐるキャラクターだったようだ。

■順撮りではないことに憤慨するも…

 アーサーが、次々に社会から疎外されることで、徐々に心にダークサイドが宿っていく本作。ホアキンは順撮りにもこだわった。しかし、さまざまな状況でそれは叶わなかった。「最初に撮影が順撮りではないと聞いたとき、僕はすごく嫌だったんだ。特にジョーカーとしての撮影は最後まで待ちたかった。それが叶わないと分かったとき、僕は憤慨したんだ」。

 しかし、そのことが、彼のアーサー像にいい影響をもたらす。「いきなりジョーカーを演じなければならなくなったとき、今まで演じてきた(ジョーカーになる前の)アーサーに、間違っている部分があることに気が付いた」。これまで順撮りが正しい役へのアプローチと思っていたホアキンだったが、先にジョーカーを演じたことで、より深くキャラクターを理解することができたのだという。結果、ヘアスタイルや衣装を含め、いくつかのシーンを撮り直した。順撮りではなかったことで、そうした軌道修正が可能になったことも、本作で得た大きな気づきだったようだ。

 ベネチア国際映画祭での金獅子賞をはじめ、すでに本年度の賞レースの主役と目されている本作。トッド・フィリップス監督と「自分たちのキャリアを終わらせるような映画は作りたくないと話していたんだ」というホアキンの強い思いが、アーサー/ジョーカーという男に投影されている。(取材・文:磯部正和)

 映画『ジョーカー』は公開中。

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