ウズベキスタンの国民的俳優、黒沢清監督作で日本語で演技「大事なのは心」

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アディズ・ラジャボフ、『旅のおわり世界のはじまり』インタビュー
アディズ・ラジャボフ、『旅のおわり世界のはじまり』インタビュー  クランクイン!

 現在公開中の日本とウズベキスタンの合作映画『旅のおわり世界のはじまり』に、日本人の主要キャストに混じって出演するウズベキスタンの国民的人気俳優アディズ・ラジャボフ。演じる役としてはもちろん、国家を代表する俳優として、両国を繋ぐという大役を担った彼は、劇中で誰よりも長い日本語セリフをよどみなく披露。初来日を果たした公開記念舞台挨拶では、黒沢清監督に「彼に出会えたことが最大の幸運」と言わしめた。そんな彼に、今回のプロジェクトに込めた思いや、言語という大きな難題に挑んだ感想を聞いた。

 本作は、2017年の日本とウズベキスタンの国交樹立25周年と、日本人が建設に関わったナボイ劇場の完成70周年が重なる記念プロジェクトとして実現。TV番組の取材のためウズベキスタンを訪れたリポーターの葉子が、異国の地でのさまざまな出会いと経験を通じ、成長する姿を描く。主人公の葉子を前田敦子が演じ、撮影クルー役として加瀬亮、染谷将太、柄本時生が出演。アディズは現地の通訳兼コーディネーター役を務める。

 現在35歳のアディズは、インスタグラムのフォロワーが100万人を超えるなど、ウズベキスタンでは知らない人がいないスター俳優。オールウズベキスタンロケとなった本作では、人気者の彼を見ようと見物人が集まってくるため、邪魔にならないよう撮影以外は奥に引っ込んでいたという。

 本作について「日本とウズベキスタンの友好関係に大きな影響を与える作品だと思います」と語った彼は、合作映画に出演した感想を「私にとっても大きな経験になりました。人生には何が起きるかわかりませんので、いつも勉強し続ける必要があります。この映画は私にとって大きな勉強、経験になったと言えます」と真剣なまなざしで語る。

 アディズにとって本作で最も困難だったのは、言わずもがな“言語”だ。撮影が始まる1ヵ月前まで、彼は日本語を見たことは愚か、聞いたこともなかった。「もちろんスクリプトはもらうのですが、それを覚えて読むだけではなく、まず頭で考えて、どのように演じるかを考えなければいけないんです。撮影が始まってからは、自分はどういうふうに映りたいか、演じたいか、いつも意識しながら映画に挑みました」。そうして必死にセリフを覚えた結果、劇中で撮影クルーにナボイ劇場の由来を語るという本作一番の長ぜりふを見事にこなし、終盤では葉子の心に訴えかける重要なセリフも、日本語に感情を込めて伝えた。

 「皆さんご存知のように、芸術には言葉がありません。つまり、言葉より大事なものは、やっぱり『心』ですよね。この映画を通して私たちは心が通じたんじゃないかと感じました。1ヵ月一緒に仕事をしている間に、黒沢さんが私に新しい課題を出したとき、通訳から日本語を聞く前に、黒沢さんの言うことをほぼ理解していました。言葉がなくても、人間は心を通じてコミュニケーションできるんだと感じました」。

 日本とウズベキスタンの架け橋として、アディズなしでは成立しなかった本作。言語という課題をクリアし、日本語で演技をするという難題まで乗り越えた彼に、黒沢監督は前述の舞台挨拶で「アディズさんを紹介できただけでも、この映画を作った価値があるんじゃないかと思っています」と最大級の賛辞を贈った。それを受け、「黒沢監督に心の底から感謝を伝えたいです。黒沢さんのような有名な監督から評価していただけるのは大きな幸せです」と謙虚に語ったアディズ。「またご縁があれば一緒に仕事をしたいというのが、今の大きな野望です」と笑顔で話していた。(取材・文・写真:編集部)

 映画『旅のおわり世界のはじまり』は公開中。

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