Jホラーブームから20年…中田秀夫監督、自身の作品を観返し「いい距離ができた」

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中田秀夫監督、『貞子』インタビュー
中田秀夫監督、『貞子』インタビュー  クランクイン!

 1998年公開の映画『リング』で、日本にJホラーブームを巻き起こした中田秀夫監督の最新映画『貞子』が、いよいよ明日公開を迎える。あの“貞子”が私たちの前にまたもや現れるのだ! 第1作目から20年を経た今、どんな想いで再び“貞子”と相まみえたのだろうか? 中田監督に話を聞いた。

 「“貞子”というものに対して、いい距離ができたんだと思うんですよ」。

 本作のオファーを引き受けたことに対し、中田監督はそう語った。『リング』シリーズはこれまでハリウッド版を含め9作品が作られた。その中で中田監督がメガホンを取ったのは、初代『リング』と1999年公開の『リング2』、そして2005年のハリウッド版『ザ・リング2』の3作。そして前述の言葉の裏には、ハリウッド版『ザ・リング2』を撮ったときの“後悔”がある。

 「ハリウッドの『ザ・リング2』を撮っている時、この演出は既にやったよな……と思うことが多々あったんです。そう思ってしまうと変に違うことをやろうとしたり、『同じことはやめておこう』と、やるべきだったことをやらなかったり。自分へのブレーキをかけてしまっていたんです。アメリカでは撮り方や編集の仕方も色々違ったし、自分の生理に合ったものとは違うものになってしまった。そんな反省や、自分に対するふつふつとした怒りがありました」。

 そんな『ザ・リング2』からも14年という月日が経った。監督自身、また新たな気持ちで自分の過去作、そして“貞子”という存在を振り返ることができるようになったことが、前出の言葉につながるのかもしれない。そして今回、『貞子』の撮影を始める前には、自身が撮ったホラー作品をほぼ全部観返したのだという。

 「なかなかやらないことなんですけどね。観返して思ったのは、自分で言うのも何なんですけど、1998年の『リング』はよくできてるな、と(笑)。やっぱり画もいいし、ストーリーも無駄がない。翌年の『リング2』はハチャメチャやってますけど、あれはあれで僕は好きで。とにかく、“貞子シリーズ”では、自分はこういうことをやってきたんだな……と、その作業で再確認することができましたね」。

 最新作では、観客が思う“貞子らしさ”は保ちつつも、時代に沿った新たな表現を取り入れる“挑戦”も行われている。過去作を改めて観直したことが、本作の撮影に関してはプラスとなったようだ。

 また、本作で注目すべきは、主演をつとめた池田エライザだ。映画単独主演2作目にして、堂々たるスクリーミング・ヒロインぶりを発揮している。中田監督が池田を主演に選んだのは、ある意味“直感”だったとか。

 「結局ホラー映画って “怖がる人”を見るのが怖いんです。特に貞子については、観客が見慣れてしまっている。だとしたら観客は、池田さん演じるヒロインが貞子に迫られる様子を見て怖がるんですよ。そこで重要なのが“目”。僕のホラー映画に出てもらった歴代ヒロインは、思い切り恐怖に目を見開いてもらってきた。そして、それを観る側の人たちは彼女達の不安や恐怖に乗ってホラー映画を怖がり、楽しむわけです。池田さんは元々、目の表現力がとてもいいんですよね」。

 ヒロインとして大きな信頼を寄せる池田について、「ここからどんどん、ポスターの真ん中に立つ人になっていく」と言い切る中田監督。思えば、松嶋菜々子の映画初主演作が『リング』であり、その後の飛躍はご存知の通り。この作品はある意味、池田エライザという女優が大きくステップアップしていく瞬間を切り取ったものとも言えるかもしれない。

 今や世代を超えて誰もが知る存在になった“貞子”だが、監督は、「名誉なことですよね。僕もそんなふうになるとは思ってなかったし、そもそも『リング』を作ったときはそこまで期待されてなかったと思うんです」と笑って明かす。なぜ貞子は、Jホラー屈指のホラーアイコンとなりえたのか? 監督の分析によると、理由は「シンプルさ」だ。

 「例えば、日本の江戸時代に描かれた幽霊画とかも、白い死に装束を着て水辺に立っていますよね。実は『リング』で最初に貞子の衣装合わせをした時、よく見ると小さな花柄が入った衣装も用意されていたんです。でも結局、アップになったときのことを考えて真っ白なものを選んだ。これが結果的に、徐々に幽霊画に近づいていった。クセがない、シンプルなキャラクターだからこそ、時代を超えて受け入れやすいのかなと思います」。

 本作の貞子はビデオデッキとテレビではなく、動画サイトから“呪い”が伝染していく。『リング』から20年を経て、“いい距離感”を得た中田監督が生み出す新たなる恐怖を、スクリーンで堪能しようではないか。(取材・文・写真:川口有紀) 

 映画『貞子』は5月24日より全国公開。

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