<アカデミー賞総括>Netflixは作品賞受賞ならず オスカーの壁はまだ厚い?

映画
第91回アカデミー賞授賞式20190225、The 91th Annual Academy Awards
第91回アカデミー賞授賞式が開催 (C)AFLO

 Netflixにとって、オスカーの壁は、やはり厚かった。ハリウッドのアワード予測エキスパートの大多数が『ROMA/ローマ』を予測する中、作品賞に輝いたのは『グリーンブック』だった。

 このアワードシーズン、各批評家賞を総なめしてきた『ROMA/ローマ』だが、オスカーに投票するアカデミーは、実際に映画を作る業界関係者の団体だ。劇場公開と同時、あるいはたった数週間後にストリーミングで配信するNetflixがスタジオや配給会社のパートナーである興行主と摩擦を起こし、映画人の間でも「Netflixは映画ではなくてテレビではないのか」という声がまだ残る中、もし『ROMA/ローマ』がオスカー作品賞を受賞すれば、業界の大変化を意味することになった。アカデミーは、まだその用意ができていなかったということだろう。

 だが、『ROMA/ローマ』に同情は不要だ。今作は、監督、外国語映画、撮影の3部門で受賞し、アルフォンソ・キュアロンは3度も受賞スピーチをしたのである。もっとも、これらの部門の獲得は、想定内だった。ほかに予想どおりだったのは、ラミ・マレック(『ボヘミアン・ラプソディ』)の主演男優、マハーシャラ・アリ(『グリーンブック』)の助演男優部門受賞だ。意外だったのは主演女優部門。この部門は、ここまでほとんどを制覇してきた上、これで7度目のノミネーションなのに一度も受賞をしていないグレン・クローズ(『天才作家の妻 40年目の真実』)でほぼ確定と思われていたのに、受賞したのはオリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』)だったのだ。コールマン本人にとっても相当に驚きだったようで、嬉し涙とユーモアにあふれるそのスピーチは、今回、最もチャーミングで、思い出に残るものとなった。

 授賞式そのものは、無難に終わった感じ。30年ぶりにホストなしとなった今回は、その分、ジョークや演出が少なく、賞をあげるイベントという本来の形に戻ったといえるが、それでも3時間以内に終わらせるという目標は達成できていない。来年に向けて、アカデミーがどんな思索をするのか、今から気になる。

 第91回アカデミー賞の受賞結果は以下の通り(★が受賞)

■作品賞
『ブラックパンサー』
『ブラック・クランズマン』
『ボヘミアン・ラプソディ』
『女王陛下のお気に入り』
★『グリーンブック』
『ROMA/ローマ』
『アリー/ スター誕生』
『バイス』

■主演男優賞
クリスチャン・ベイル『バイス』
ブラッドリー・クーパー『アリー/スター誕生』
ウィレム・デフォー『永遠の門 ゴッホの見た未来』
★ラミ・マレック『ボヘミアン・ラプソディ』
ヴィゴ・モーテンセン『グリーンブック』

■主演女優賞
ヤリッツァ・アパリシオ『ROMA/ローマ』
グレン・クローズ『天才作家の妻 ‐40年目の真実‐』
★オリヴィア・コールマン『女王陛下のお気に入り』
レディー・ガガ『アリー/スター誕生』
メリッサ・マッカーシー『ある女流作家の罪と罰』

■助演男優賞
★マハーシャラ・アリ『グリーンブック』
アダム・ドライバー『ブラック・クランズマン』
サム・エリオット『アリー/ スター誕生』
リチャード・E・グラント『ある女流作家の罪と罰』
サム・ロックウェル『バイス』

■助演女優賞
エイミー・アダムス『バイス』
マリーナ・デ・タビラ『ROMA/ローマ』
★レジーナ・キング『ビール・ストリートの恋人たち』
エマ・ストーン『女王陛下のお気に入り』
レイチェル・ワイズ『女王陛下のお気に入り』

■監督賞
スパイク・リー『ブラック・クランズマン』
パヴェウ・パヴリコフスキ『COLD WAR あの歌、2つの心』
ヨルゴス・ランティモス『女王陛下のお気に入り』
★アルフォンソ・キャアロン『ROMA/ローマ』
アダム・マッケイ『バイス』

■長編アニメ映画賞
『インクレディブル・ファミリー』
『犬ヶ島』
『未来のミライ』
『シュガー・ラッシュ:オンライン』
★『スパイダーマン:スパイダーバース』

■短編アニメーション賞
『Animal Behaviour(原題)』
★『Bao』
『Late Afternoon(原題)』
『One Small Step(原題)』
『Weekends(原題)』

■脚本賞
★ニック・ヴァレロンガ、ブライアン・カリー、ピーター・ファレリー 『グリーンブック』
デボラ・ディヴィス、トニー・マクナマラ 『女王陛下のお気に入り』
アダム・マッケイ 『バイス』
ポール・シュレイダー 『魂のゆくえ』
アルフォンソ・キュアロン 『ROMA/ローマ』

■脚色賞
ブラッドリー・クーパー、エリック・ロス、ウィル・フェッターズ 『アリー/ スター誕生』
ニコール・ホロフセナー、ジェフ・ウィッティ 『ある女流作家の罪と罰』
バリー・ジェンキンス 『ビール・ストリートの恋人たち』
★スパイク・リー、チャーリー・ワクテル、デイビッド・ラビノウィッツ、ケヴィン・ウィルモット 『ブラック・クランズマン』
ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン 『バスターのバラード』

■撮影賞
★アルフォンソ・キュアロン 『ROMA/ローマ』
マシュー・リバティーク 『アリー/ スター誕生』
ロビー・ライアン 『女王陛下のお気に入り』
ウカシュ・ジャル 『COLD WAR あの歌、2つの心』
キャレブ・デシャネル 『Never Look Away(原題)』

■美術賞
『女王陛下のお気に入り』
★『ブラックパンサー』
『ファースト・マン』
『メリー・ポピンズ リターンズ』
『ROMA/ローマ』

■音響編集賞
『クワイエット・プレイス』
『ファースト・マン』
『ブラックパンサー』
★『ボヘミアン・ラプソディ』
『ROMA/ローマ』

■録音賞
『アリー/スター誕生』
『ブラックパンサー』
『ファースト・マン』
★『ボヘミアン・ラプソディ』
『ROMA/ローマ』

■編集賞
★『ボヘミアン・ラプソディ』
『バイス』
『女王陛下のお気に入り』
『グリーンブック』
『ブラック・クランズマン』

■視覚効果賞
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』
『プーと大人になった僕』
★『ファースト・マン』
『レディ・プレイヤー1』
『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』

■作曲賞
★ルートヴィッヒ・ヨーランソン 『ブラックパンサー』
テレンス・ブランチャード 『ブラック・クランズマン』
ニコラス・ブリテル 『ビール・ストリートの恋人たち』
アレクサンドル・デスプラ 『犬ヶ島』
マーク・シェイマン 『メリー・ポピンズ リターンズ』

■歌曲賞
「When A Cowboy Trades His Spurs For Wings(原題)」/『バスターのバラード」
「オール・ザ・スターズ」/『ブラックパンサー』
「幸せのありか」/『メリー・ポピンズ リターンズ』
「I’ll Fight(原題)」/『RBG 最強の85才』
★「シャロウ ~『アリー/スター誕生』愛のうた」/『アリー/スター誕生』

■衣装デザイン賞
★ルース・E・カーター 『ブラックパンサー』
サンディ・パウエル 『メリー・ポピンズ リターンズ』
サンディ・パウエル 『女王陛下のお気に入り』
アレクサンドラ・バーン 『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』
メアリー・ゾフレス 『バスターのバラード』

■メイクアップ&ヘアスタイリング賞
★『バイス』
『Border(原題)』
『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』

■外国語映画賞
『Capernaum(原題)』(レバノン)
『COLD WAR あの歌、2つの心』(ポーランド)
『Never Look Away(原題)』(ドイツ)
★『ROMA/ローマ』(メキシコ)
『万引き家族』(日本)

■短編実写映画賞
『Detainment(原題)』
『野獣』
『Marguerite(原題)』
『Mother(原題)』
★『Skin(原題)』

■長編ドキュメンタリー賞
★『Free Solo(原題)』
『Hale County This Morning, This Evening(原題)』
『Minding the Gap(原題)』
『父から息子へ ~戦火の国より~』
『RBG 最強の85才』

■短編ドキュメンタリー賞
『Black Sheep(原題)』
『エンド・ゲーム: 最期のあり方』
『Lifeboat(原題)』
『A Night at the Garden(原題)』
★『ピリオド 羽ばたく女性たち』

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