『ビール・ストリートの恋人たち』監督が明かす製作秘話 チャンスをくれたブラッド・ピットに感謝

映画
<オフィシャル/クランクイン独占>『ビール・ストリートの恋人たち』バリー・ジェンキンス監督インタビュー 201902 
『ビール・ストリートの恋人たち』バリー・ジェンキンス監督インタビュー (C)Yoshiyuki Uchibori

 映画『ムーンライト』(16)で第89回アカデミー賞作品賞・脚色賞ほか数々の賞に輝いたバリー・ジェンキンス監督が、敬愛する黒人作家ジェイムズ・ボールドウィンの同名小説を映画化した最新作『ビール・ストリートの恋人たち』を引っ提げ初来日。いち早く本作のプロデュースに名乗りを上げたプランB(俳優のブラッド・ピット率いる製作会社)に感謝の意を表しながら、本作に込めた熱い思いを真摯に語った。

 1970年代、N.Y.ハーレムが舞台の本作は、19歳のティッシュ(キキ・レイン)と22歳のファニー(ステファン・ジェームズ)という若い黒人カップルの純愛を描きながら、差別的な社会への抵抗と怒りを浮き彫りにするラブストーリー。第76回ゴールデン・グローブ賞では、ティッシュの母親シャロンを熱演したレジーナ・キングが助演女優賞を獲得し、今月25日に開催される第91回アカデミー賞授賞式では、ノミネートされた脚色賞(ジェンキンス監督)、助演女優賞(レジーナ)、作曲賞(ニコラス・ブリテル)の3部門で結果を待つ。

 2年前、アカデミー賞作品賞の発表で、読み違いのアクシデント(受賞作を『ラ・ラ・ランド』と誤って発表)に見舞われたジェンキンス監督。「とても初歩的なミスが一番大切な場面で起きてしまったことは残念に思うけれど、個人的には誰も恨んではいない。間違えたら、やり直せばいいだけのことだからね。それよりも、自分のセクシャリティに思い悩む黒人青年の物語が作品賞を受賞したことはとても歴史的な出来事なのに、読み間違いばかり注目されたことが何よりも悔しかった」と苦笑いを浮かべる。

 そして再びアカデミー賞発表の日を迎えるが、「今回は1人の映画ファンとして気楽に参加したい」と語るジェンキンス監督。『ムーンライト』に続き、またしても脚色賞にノミネートされているが、そもそも数あるボールドウィン小説のなかで、なぜ『ビール・ストリートの恋人たち』を映画化しようと思い至ったのか。「彼の小説は、主人公自らが招き寄せてしまう悲劇的なものが多いのですが、この作品は若い2人がただ純粋に愛し合っているだけなのに、それを滅ぼそうとする理不尽な力がのしかかってくる。恋人たちの美しい愛の姿と黒人に対する不当な扱い、2つの声を見事にブレンドしている描写に強く心を奪われたんだ」と述懐する。

 そして、ジェンキンス監督の情熱にいち早く共感し、製作者として名乗りを上げたのがブラッド率いるプランBだった。同社は、ジェンキンス監督の才能に惚れ込み、長編映画デビュー作『Medicine for Melancholy(原題)』から3作連続でプロデュースを行っている。「ブラッドは誰もが認めるハリウッドのトップスターだが、同時に才能を持ったクリエイターに道を拓いてくれる優れた製作者でもある。彼が立ち上げた「プランB」は、私たちのような資金不足に苦しむ映画人にチャンスを与えてくれるだけでなく、作品に対して一切口出しせず、自由に創作活動できる環境を整えてくれる。普通、あれだけのスターパワーを持っている人なら、監督をコントロールしようとするものだが、彼にはそういう考えが全くない。本当に最高の男だよ」と称賛の言葉を惜しまない。

 人種差別への抵抗と怒りを内に秘めながら、美しい純愛が情感豊かに描かれる本作。ウォン・カーウァイ監督の作風にも通じるその映像美は、ラブストーリーを好む女性の心にも優しくスーっと沁み渡る。「確かに、『ムーンライト』では『ブエノスアイレス』の影響を受けていたし、本作では『花様年華』を想起させるシーンもある。ただそれは、同じメディアの中で無意識のうちにインスパイアされていることが多く、完成した作品を観て“なるほど”と気づくこともよくあるんだ。新作を撮るときは、なるべくオリジナルなものを追求したいからね」とニッコリ。

 今回、人間の豊かな表情を映し出すためにALEXA 65(デフォルトサイズが2:1)というカメラで撮影されたそうだが、「この物語に私はポートレートのような要素が必要だと感じた。表情の積み重ねによって生まれる、映画と写真の間にある不思議な世界観もぜひ味わってほしいね」とアピールしていた。(取材・文:坂田正樹)

 映画『ビール・ストリートの恋人たち』は2月22日より全国公開。

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