『ハード・コア』山下敦弘監督&原作者いましろたかし対談「いびつで破綻してる(笑)」

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映画『ハード・コア』
映画『ハード・コア』、(左から)原作者のいましろたかし、山下敦弘監督  クランクイン!

 主演、プロデュースに山田孝之、共演者に佐藤健、荒川良々と人気俳優が名を連ねているにもかかわらず、どこか“怪作”の香りが漂う映画『ハード・コア』。社会のはみだし者の主人公、埋蔵金探し、そして謎のロボット…平成の最後に生まれたこの奇妙な作品をどう読み解くべきか? 監督を務めた山下敦弘と、“平成の奇書”と言われる原作漫画『ハード・コア 平成地獄ブラザーズ』の作画担当・いましろたかしによる対談が実現した。

――山下監督は以前より自身の映画が、いましろ作品に強い影響を受けたことを公言されています。

山下:以前、つげ義春さん原作の『リアリズムの宿』を映画にしたんですが、ラストで女子高生が手を振るシーンは、いましろさんの『中野の友人』という短編のまんまでして(笑)。当時はそれを言えなかったんですけど…。

いましろ:つげさんの原作をあそこまで改変するってすごいなって思いましたよ(笑)。

山下:つげさんも映画を見て「ん?」って顔をされてて(苦笑)。とにかく、いましろさんの漫画が好きでしたね。『トコトコ節』の男だけの感じとか自分の『どんてん生活』でも強く影響を受けています。

――『ハード・コア』を最初に読んだときは?

山下:「なんじゃこら?」って(笑)。でもすごく興奮しましたね。

いましろ:僕も(原作担当の)狩撫麻礼さんからストーリーを受け取ったとき「なんじゃこら?」って思ったよ。いや、ストーリーを受け取るつもりが、登場人物とその場のシチュエーションと顛末(てんまつ)が書いてあるだけで、これは長編になるのかと疑問と不信感がわいた(笑)。

――そもそも、いましろさんが作画を担当することになったのは?

いましろ:狩撫さんの指名です。狩撫麻礼は、いましろたかしを一番褒めてくれた人なんです。その人が亡くなって(※今年1月逝去)、僕を褒めてくれる人がいなくなっちゃった…。

――狩撫さんと言えば別名義作品も含め、ドラマ『リバースエッジ 大川端探偵社』『湯けむりスナイパー』などの作品の原作も手がけていらっしゃいます。

山下:狩撫さんの作品の主人公って、他作品だとカッコいい男が多いですよね?

いましろ:でも「カッコ悪いものもやりたいんだ」って言ってました。それこそ原作の主人公の右近はすごくカッコ悪い。出会い系で知り合った女性が待ち合わせ場所に来たら、容姿を確認した上で接触したり(笑)。

山下:原作を読み直したら、もっとハードボイルドな印象だったけど、右近って意外と安定してなくてカッコ悪いんですよね(笑)。

いましろ:芯があるようでない(笑)。でも情はあるんだ。

――原作では、最初は右近と牛山という社会のはみだし者の日常が描かれていましたが、突然、埋蔵金を探す結社や謎のロボットが登場するなど激しい展開を見せます。

いましろ:そこは僕が、狩撫さんに「漫画らしい荒唐無稽な物語にしたい」って注文したんです。「ロボットか幽霊を出したい」ってお願いしたのを覚えています。埋蔵金は当時、糸井重里が徳川埋蔵金の発掘をやってて、僕が熱く語っていたのを汲んでくれたんじゃないかと(笑)。

山下:『ギミア・ぶれいく』(TBS系)でやってましたね。僕も絶対に見つかるはずだって期待しながら見ていました(笑)。

いましろ:でも、雑誌で連載してると、展開がすごく唐突なんですよ。急に結社が出てきたり、釣りに行ったらクジラが釣れたり(笑)。

山下:原作の連載という時間軸ゆえのいびつさというか(笑)、バランスの悪さを映画でもそのまま出そうと思って、あの物語の入口と出口が全く違う感じをそのまま映画に反映させています。

いましろ:いびつで破綻してる(笑)。これを映画にするって脚本の向井(康介)くんはかなり悩んだんじゃないかと…(笑)。

――山田孝之、荒川良々、佐藤健という人気俳優が出てるけど、キラキラもしていないし、かといってコメディーと言うのも何か違うような…。

山下:僕自身も作っていく中で「これ、笑っていいのか?」と思うようになったんです。昔は笑って読んでたのに、いま読むとシリアスに感じて。だから、現場で面白くて笑ったシーンが意外とハマらずに編集でカットになったりしてるんです。ちょっと複雑なんですよね。「笑ってほしい」と思いつつ、シリアスに受け取ってほしい思いもあって…。

いましろ:山下さん自身、そういう映画が好きなんでしょ? シリアスだけど笑える映画。

山下:好きですね。「笑わせたい」というより、必死だから笑える感じが。だから今回も、笑ってほしいと思いつつ、あんまり笑われると「笑い過ぎだろ!」って怒りそうな気がします(笑)。(取材・文・写真:黒豆直樹)

 映画『ハード・コア』は公開中。

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