趣里、過去の挫折と向き合い「他人事と思えない」難役に共感

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映画『生きてるだけで、愛。』趣里インタビュー
趣里、映画『生きてるだけで、愛。』インタビュー  クランクイン!

 女優・趣里。今、彼女のことが気になっている視聴者は多いのではないだろうか? 特に今年は、ドラマ『ブラックぺアン』(TBS)で演じたクールな看護師・猫田で鮮烈な印象を残したかと思えば、現在放送中の『僕とシッポと神楽坂』(テレビ朝日)では主人公に想いを寄せるキュートな芸者役。そんな趣里の主演映画『生きてるだけで、愛。』が、11月9日より公開される。

 原作は、本谷有希子の同名小説。趣里が演じる寧子は、過眠症で引きこもっているという人物だ。ゴシップ雑誌の編集者である恋人・津奈木(菅田将暉)の部屋で同棲生活を送っているが、自分でうまく感情をコントロールできずに津奈木にも当たり散らす日々。そんな中、津奈木の元恋人・安堂(仲里依紗)が突然現れ、寧子にカフェでのバイトを無理やり決めてしまう…というストーリー。

 一言で言ってしまえば、寧子はエキセントリックで“面倒くさい”キャラクターだ。鬱症状のためほとんど外に出ることができず、バイトも続かず、そんな自分への苛立ちを津奈木に理不尽にぶつける。しかし最初にこの作品の脚本を読んだ時、趣里は「絶対にこの役をやりたい」と強く思ったという。

 「彼女は客観的に自分のことも分かっているんだけど変えられない、でも頑張ろうと思っているという部分が、すごく理解できたんです。もちろん表現の方法は全然違うけど、そういう思いは自分の中にもあったし、他人事とは思えなかった。誰もが普遍的に彼女みたいになる可能性もあるし、人生の中でそういうことにぶつかることもあるんじゃないかな。だから、寧子に共感できる人は多いと思います」。

 明るく、あっけらかんと話す彼女は、映画の寧子とは一見かけはなれているように見える。でも彼女がこの役に強く惹かれたのは、過去に経験した“挫折”が大きく関係している。

 幼い頃からバレエを習い、高校時代には海外に留学するなど本格的にバレエダンサーへの道を志していた彼女。しかし、足の故障によりその夢は絶たれてしまう。今回寧子を演じることは、彼女にとって“思い出したくない感情”に再度向き合う作業でもあったという。

 「ケガをした時は毎日どう過ごしていたか覚えてないくらいの日々がありました。一瞬にして夢がなくなってしまったので。自分の体だし『もう無理だな』と分かりつつも、まだ頑張っている自分もいました。あの頃は『なんで生きているんだろう』とも思った事もありました。だから寧子と自分を、そこで重ね合わせることができたのだと思います」。

 今回監督を務めた関根光才とはクランクイン前、過去の嫌だったこと、苦しかったこと、どうしようもないことなど、パーソナルな部分も含めいろいろと話していったという。そういった役と、そして“自分自身”とも向き合う事前の準備作業もあり、彼女いわく「寧子という役と仲良くなれた」。なのでヒリヒリするような画面とは裏腹に、撮影はとても楽しく進んでいったのだとか。

 「俳優って、不思議ですよね。どんなシーンでも自分がどこかに出るお仕事。でもだからこそ、私も寧子という役に救われたのかな。次に進むためにも、あの時のことと向き合えてよかったなと思っています」。

 また、バレエに挫折し絶望していた彼女を変えたのは、たまたま観に行った舞台作品だった。その体験が彼女を俳優へと導くことになるのだが、自分がエンターテイメントに救われた経験があるからこそ、この映画にかける思いも大きい。

 「いろんな見方ができるとは思いますけど、この作品で観てくださった方の心が何か少しでも動いてくれたらうれしい、そう思っています」。

 自分がかつて感じていた、エンターテイメントの持っている力を信じたい。そう語る彼女の表情は、“演じる”という仕事への喜びに満ち満ちていて。そんな趣里がまさに全身全霊で挑んだ主演作、観た人の心は必ず揺さぶられるはずだ。(取材・文・写真:川口有紀)

 映画『生きてるだけで、愛。』は、11月9日より全国公開。

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